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造船・舶用に関わる人の必修ニュース 2026年10月第2週|川崎重工が坂出に10年で1,000億円・大島造船は香焼で年10隻へ・自動車船の発注が73隻に急増──これだけ押さえれば情報通

造船トピックス
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「業界の人と話すとき、話題に困りたくない」「先週何が動いたか、最低限これだけは押さえておきたい」──そんな造船・舶用業界に関わる方のための、週次キャッチアップ記事です。今週(2026年10月5日〜10月9日)は、「大手が『10年先』の投資計画と生産計画を数字で示した週」でした。川崎重工業は坂出工場への10年間で約1,000億円の投資を打ち出し、大島造船所は香焼工場で2031年に年10隻を建造する計画を示しました。海の向こうでは、中国車の輸出急増で自動車船が足りなくなり、今年の発注が70隻を超えています。

本記事は2026年10月10日時点の公開情報(日本海事新聞 電子版・各社発表ほか)をもとに、業界人なら最低限押さえておきたい先週のトピックスを1本に凝縮しました。各トピックは「何が起きたか」→「なぜ重要か」の順で解説します。

※本記事は日本海事新聞 電子版の2026年10月6日付〜10月13日付(10月13日付は先行配信分)の各記事、各社の公式発表ほかの公開情報に基づき作成しています。数値は各記事の公表時点のものです。

📖 この記事の目次(クリックでジャンプ)

1. 川崎重工、坂出工場に10年で約1,000億円──基金分の450億円に加え550億円、35年に売上2,000億円超へ

【何が起きた?】川崎重工業(7012)は、商船事業を手がける坂出工場(香川県坂出市)に、2026年から35年までの10年間で約1,000億円を投資します。内訳は、すでに発表済みの造船業再生基金に関連する約450億円(政府からの助成は最大約156億円)と、それ以外の投資約550億円です。10月6日に発表した「グループビジョン2030」の進捗報告会の資料で明らかにしました(日本海事新聞10月7日付2面)。

同社は資料のなかで、造船業(商船)を取り巻く環境は大きく好転し、全社の収益に大きく貢献すると位置づけています。投資の目的は自動化・ロボット化、デジタルシップヤード化、建造能力の増加の3つ。坂出工場については、2035年に売上収益2,000億円超、事業利益率15%という目標を掲げました(同)。

項目内容
投資期間2026〜2035年の10年間
投資総額約1,000億円
うち再生基金関連約450億円(政府の助成は最大約156億円)
うちその他の投資約550億円
目的自動化・ロボット化、デジタルシップヤード化、建造能力増加
2035年の目標売上収益2,000億円超、事業利益率15%
出典:日本海事新聞10月7日付2面(川崎重工のグループビジョン2030進捗報告会資料の内容)

【なぜ重要?】先週お伝えした三菱重工の下関・長州出島(約1,000億円)に続き、川崎重工も基金の枠を超えて自前の資金を上乗せする姿勢を示しました(先週の必修ニュース)。再生基金の助成は投資の一部にすぎず、残りは各社が自分のお金で賄います。国の後押しだけでなく、商船事業が稼げると経営判断したことの表れといえます。坂出工場はLPG船やLNG船、液化水素運搬船など、ガスを運ぶ船に強い工場です(この段落の解釈は筆者の見立てです)。

比較川崎重工(坂出工場)三菱重工(下関・長州出島)
投資規模10年で約1,000億円約1,000億円
国の支援再生基金から最大約156億円(基金関連の投資は約450億円)再生基金から最大400億円
中身自動化・ロボット化、デジタルシップヤード化、建造能力増加人工島の用地取得、ブロック工場新設で建造能力拡大
出典:日本海事新聞(川崎重工は10月7日付2面、三菱重工は10月5日付1面と同社発表〔先週の必修ニュースで整理〕)
📌 ここはチェック

事業利益率15%という目標は、造船業としてはかなり高い目標です。投資家の方は、今後の決算で商船部門の利益率がどこまで上がっていくかを追うと、計画の進み具合が分かります。川崎重工の事業や株価の見方は川崎重工業(7012)の銘柄ガイド、再生基金の認定一覧は日本造船 補助金マップで整理しています。

2. 大島造船所、25年度は39隻成約・手持ち3.9年分──香焼工場で2031年に年10隻へ

【何が起きた?】バルカー(ばら積み船)専業の大手、大島造船所(長崎県西海市、非上場)の首脳が10月6日に東京都内で会見し、2025年度の新造船受注が39隻だったと明らかにしました。24年度の62隻から減りましたが、本契約が26年度にずれ込んだ「内定船」が26年1〜3月に相当数あったためで、堅調さは続いているとしています。手持ち工事量は157隻・約3.9年分で、2030年の前半までの仕事を確保済み。今後の商談は2030年の後半以降に納期を迎える船になります(日本海事新聞10月7日付1面)。

山口眞社長は、納期が先になって資機材価格や為替の見通しが立てにくいなかでも、「基本的には、いただいたお話し(発注希望)には対応していきたい」と語りました。25年度の受注で多かったのは6万重量トン級のウルトラマックス、次いで4万重量トン級のハンディサイズ。河村浩一常務によると、船主やオペレーターの間では、昨年は「今年いっぱいは良い」という見方が多かったのが、足元では「来年も良い」という意見が増えてきたといいます(同)。

📊 大島造船所の増産計画
  • 香焼工場(長崎市):現在の年4隻 → 2031年に年10隻。2022年12月に三菱重工グループから取得した、長さ990メートル・幅100メートルの世界有数の建造ドックを持つ。今後の増産を担う中心拠点
  • 大島工場(長崎県西海市):年34〜35隻レベル。今年末に1,200トン吊りのゴライアスクレーン1基が入り、1,200トン吊り3基体制に
  • 全社:年間44〜45隻規模を目指す
  • 設計:ベトナムの設計会社「DAIZO TEC」(20周年・170人)に、詳細設計に加えて一部の上流設計も任せる方針

出典:日本海事新聞10月7日付1面

【なぜ重要?】国は国内の船舶建造量を年間800万総トンから2035年に1,800万総トンへ増やす目標を掲げています。大島造船所の計画は、年38〜39隻から44〜45隻へ、およそ15%の増産にあたります(当ブログ計算)。一方で山口社長は、タンカーやコンテナ船は得意な中型バルカーの「飛び地」だとして、当面は従来燃料の中型バルカーに取り組む考えを示しました。得意分野に集中して量を増やす戦略です。国の「建造量倍増」計画の全体像は建造能力2倍計画の深読み解説、大島造船所の業績は大島造船所の会社解説でまとめています(前段の割合は筆者の計算・見立てです)。

3. 自動車船が「未曽有の需給逼迫」──中国車の輸出急増で、今年の発注は73隻に

【何が起きた?】完成車や建設機械を運ぶ自動車船の需給が、深刻なほど逼迫しています。中国の自動車メーカーの台頭で海上の荷動きが爆発的に増え、新しい自動車船が大量に供給されたにもかかわらず、需要の伸びに追いついていません(日本海事新聞10月6日付1面)。

欧州の自動車船大手ワレニウス・ウィルヘルムセン(WW)のラッセ・クリストファーセンCEOは9月下旬の説明会で、中国の自動車産業がRORO船業界に与える影響は、2000年代に中国の資源輸入がバルカーやタンカーに与えた影響に匹敵すると述べました。同社によると、年間の自動車輸出が100万台に達してからの6年間で、日本は370万台、韓国は150万台まで増えたのに対し、中国は150万台から1,000万台に達する勢いです(同)。

項目数字
自動車船の新造発注(今年)昨年の9隻から73隻に急増(2022〜24年と同じ年70〜80隻規模)
世界の自動車船の船腹量約950隻
新造発注残約180隻(既存船に対する比率は、42%→20%に下がった後、25%に上昇)
2023年以降の竣工200隻近く
出典:日本海事新聞10月6日付1面(数字はWWによる)

【なぜ重要?】自動車船は、日本の造船所もかつて多く手がけてきた船種です。ただ、先週の記事でお伝えしたノルウェーGCCの8隻追加発注が中国の造船所向けだったように、足元の発注では中国の造船所の存在感が大きいとみられます。自動車船の需要の軸足が日本・韓国の自動車輸出から中国の自動車輸出に移ったことは、船を造る国の勢力図にも影響します。日本の造船所がこの需要をどこまで取り込めるかは、今後の注目点です(この段落は筆者の見立てです)。

4. 9月の新造船受発注──英・トルコの船主が日本に発注、中国はロット案件が続く

【何が起きた?】日本海事新聞の集計によると、9月も国内外の主要造船所で一定の受注が続きました。手持ち工事が増え、商談の中心は2030年以降の納期になっています。日本の造船所が世界で一定のシェアを持つバルカーでは船価が強含みですが、それでも船主の発注は続いています(日本海事新聞10月13日付5面)。

区分案件
日本関連英国船主大手ユニオン・マリタイムが福岡造船に1万9,900重量トン型ケミカル船2隻を発注
日本関連トルコのGSDグループが日本シップヤード(NSY)に4万300重量トン型ハンディサイズバルカー1隻を発注(伊藤忠商事が仲介)
日本関連ギリシャのドライデル・シッピングが常石造船に8万2,000重量トン型カムサマックス2隻(先週お伝えした案件)
日本の船主・韓国建造飯野海運(9119)がHD現代重工業に9万立方メートル型VLGC(大型LPG船)1隻を発注
中国COSCOグループが6万重量トン級の多目的重量物船14隻を整備(大連中遠海運重工に8隻、黄海造船で建造する6隻を裸用船)
中国CSSCグループのリース会社が8万重量トン型バルカー(穀物運搬船)10隻を契約
韓国ハンファオーシャンが台湾の陽明海運と1万3,000TEU型LNG2元燃料コンテナ船6隻を契約
出典:日本海事新聞10月13日付5面「新造船受発注リスト 2026年9月(本紙集計)」

【なぜ重要?】中国は10隻、14隻といったまとまった数(ロット)の案件が目立ち、自国の海運・造船グループの中での発注も多いのが特徴です。対する日本は1〜2隻ずつですが、英国・トルコ・ギリシャの海外船主から発注が来ている点が目を引きます。日本の造船所の受注の質を見るうえで、どこの国の船主から来ているかにも注目すると面白いと思います(この段落は筆者の見立てです)。

5. 今週の受注・進水──サムスン重工がガス船4隻、日本初のEV内航コンテナ船が進水

造船所・会社案件ポイント
サムスン重工業(韓国)VLGC2隻(英領バミューダの船主、9月30日開示)とLNG船2隻(アジアの船主、10月2日開示)を受注LNG船は1隻約2億4,720万ドル。1〜9月の受注高は117億ドル、8月末の受注残は151隻・355億ドル
三浦造船所(大分県佐伯市)井本商運の200TEU型EV(電気推進)内航コンテナ船「たかさご」進水(10月8日)日本初のEV内航コンテナ船。交換式のコンテナ蓄電池などで運航し、来年3月末に竣工、神戸〜広島航路に就航予定
青島北海造船(中国)韓国ポラリス・シッピング向け21万重量トン型バルカー4隻に、スイスWinGDの2元燃料エンジン「X72DF-M-1.0」を搭載主にエタノール燃料を使う見込みで、メタノールにも対応。2031年引き渡し見込み
未公表住友商事(8053)の持ち分法適用会社、ノルウェーのIWSフリートが洋上風力の作業支援船(CSOV)4隻を発注(10月7日発表)2029〜30年竣工予定。IWSのCSOV船隊は6隻から10隻に
出典:日本海事新聞10月8日付2面(サムスン重工)、10月9日付1面(たかさご)・2面(IWS)、10月13日付2面(WinGD)

【なぜ重要?】「たかさご」は、交換式のコンテナ型蓄電池と船内の電池・発電機で走る、脱炭素の内航船の先駆けです。三浦造船所の三浦唯秀社長は「日本のゼロエミッション船のさきがけとなる船」と表現しました(日本海事新聞10月9日付1面)。大型の外航船ではアンモニアやメタノールなど新燃料が主役ですが、短い航路の内航船では電気推進という別の答えが形になりつつあります。ゼロエミッション船の補助制度はゼロエミッション船の補助金まとめで解説しています(前段は筆者の見立てです)。

6. 今週の短信──港製器が世界シェア20%目標、JMUが「AIブレーン」構想ほか

  • 港製器工業(大阪府高槻市)、コンテナの固縛(ラッシング)金物で世界シェアを5%から20%へ──2031年までの5年間の中期計画で掲げた目標。国が造船業を成長戦略の重点分野とするなかで、建造ラッシュに伴う需要拡大を見込む。24年度の売上高は過去最高の46億円で、最終年度(31年4月期)にグループ売上高100億円を目指す(日本海事新聞10月13日付2面)
  • 造船業界のAI・ロボティクスのシンポジウム開催(10月6日)──JMUの勇﨑雅朗生産技術本部長は「データだけでは生産性の向上は勝ち取れない」とし、工程の制約や熟練者のノウハウを組み込んだ複数のAIエージェントを束ねる「AIブレーン」の活用を提示。パネル討論では、熟練技術者の経験や判断をどうデータ化するかが課題に挙がった(日本海事新聞10月8日付2面)
  • JMU、2027年春の新卒入社予定者101人の内定式を呉で開催(10月2日、大和ミュージアム)(日本海事新聞10月8日付2面)。造船業界への就職を考える方は日本の造船会社ランキングもどうぞ
  • 常石グループ、広島大学と包括連携協定(10月5日)──2004年からの共同研究は累計300件近くに達し、成果の75%以上が商品開発や建造技術に使われている(日本海事新聞10月7日付2面)
  • 原子力商船の米コアパワー、ボーCEOが改めて「日本が最優先」──船体など原子力以外の部分の日本建造を、政府支援の有無も含めて来年5月までに最終判断する。韓国は「プランB(次善の策)」との位置づけ(日本海事新聞10月6日付1面インタビュー)。先々週お伝えした話題の続報です
  • 日酸TANAKA、鋼板加工向けの新型ファイバーレーザー切断機「TBL-TI8000」を発売──8キロワット発振器を搭載。炭酸ガスレーザー切断機からの更新需要を狙う(日本海事新聞10月13日付2面)

7. 今週の用語解説

手持ち工事量(○年分)とは

造船所がすでに受注していて、まだ引き渡していない船の量を、年間の建造能力で割ったもの。大島造船所の157隻・約3.9年分は、新しい注文を取らなくても約4年間は工場が動き続けられることを意味します。

ウルトラマックス・ハンディサイズ・カムサマックスとは

バルカー(ばら積み船)の大きさの呼び名。ハンディサイズは4万重量トン級前後、ウルトラマックスは6万重量トン級、カムサマックスは8万2,000重量トン級が目安です。カムサマックスは、ギニアのカムサール港に入れる最大の大きさに由来します。

VLGC(ブイエルジーシー)とは

Very Large Gas Carrierの略で、LPG(液化石油ガス)を運ぶ大型の船。タンク容量はおおむね8万〜9万立方メートル級です。川崎重工の坂出工場も得意とする船種です。

CSOV(シーエスオーブイ)とは

洋上風力発電所の建設・試運転・保守のときに、技術者を運び、船上で寝泊まりできるようにする特殊な作業支援船。揺れを抑えて風車に安全に乗り移れる設備などを備えます。

8. まとめ──今週の3行サマリ

  1. 川崎重工が坂出工場に10年で約1,000億円──基金関連450億円に自前の550億円を上乗せ。35年に売上2,000億円超・利益率15%
  2. 大島造船所は25年度39隻成約・手持ち3.9年分──香焼で31年に年10隻、全社で年44〜45隻へ
  3. 自動車船が未曽有の逼迫──中国車の輸出急増で今年の発注は73隻。日本には海外船主からバルカーなどの発注が続く
👀 来週以降の注目
  • 再生基金の認定を受けた他の造船会社が、川崎重工のように基金以外の投資額を示すかどうか
  • 自動車船の発注がどこの国の造船所に向かうか(日本の造船所の受注はあるか)
  • 鋼材値上げ(今週の鉄鋼版参照)が、2030年代納期の船価にどう織り込まれるか

大手が10年先の投資と生産の計画を数字で示し、海外では新しい需要の波が起きた1週間でした。これだけ押さえておけば、明日の打ち合わせや業界人との会話で恥をかかずに済むはずです。引き続き毎週このシリーズで「業界人の必修ニュース」をお届けしていきますので、定期チェックにご活用ください。

💡 ぞうせんおじさんの一言

10年先の数字を出せるのは、仕事が4年分たまっている今だからこそ。造船業界は攻めの投資の季節に入っています。
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本記事の出典:日本海事新聞 電子版(自動車船の需給逼迫・コアパワーのボーCEOインタビュー〔10月6日付1面〕、大島造船所の会見〔10月7日付1面〕、川崎重工の坂出工場投資・常石グループと広島大学〔10月7日付2面〕、サムスン重工の受注・AI・ロボティクスシンポジウム・JMUの内定式〔10月8日付2面〕、井本商運「たかさご」進水〔10月9日付1面〕、住友商事・IWSのCSOV発注〔10月9日付2面〕、港製器工業・WinGD・日酸TANAKA〔10月13日付2面〕、新造船受発注リスト2026年9月〔10月13日付5面〕)。証券コードはYahoo!ファイナンスで照合。数値は各記事の公表時点のものです。

⚠️ 注意点

本記事は公開情報に基づく業界ニュースの解説であり、特定企業への投資勧誘を目的としたものではありません。「なぜ重要?」の解説には筆者の見立てを含みます。最新かつ正確な情報は、各社の公式発表や一次情報を必ずご確認ください。記載内容に基づいて被ったいかなるトラブル・損失についても、情報提供者は一切の責任を負いません。

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