造船は今治地区ばかりではありません。
九州地区には日本一のバルク特化型造船会社「大島造船所」があります。
多くの造船会社が様々な船種に対応する中、船種をバルクキャリア1本に絞ることで効率化・コストダウンを徹底し、生き残った会社です。
そして2025年3月期は売上2,037億円・純利益248億円という過去最高水準に到達。香焼工場の本格稼働、LNG燃料船シリーズの量産、住友商事出身の山口社長への体制刷新と、変化のスピードがとにかく速い。
この記事では、橋やトマトもつくる大島造船所の会社概要・最新業績(2025年3月期)・最新トピックス(2024〜2025年)・展望まで、最新情報ベースで完全ガイドします♪
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※本記事は2026年4月時点の公表情報に基づき、官報決算データ・公式サイト・業界紙報道を一次情報として確認できた事項を中心に整理しています。
📖 この記事の目次(クリックでジャンプ)
- 〜会社情報〜(2024年6月の社長交代も反映)
- 〜会社の特長〜(バルク日本一・国内最大級の建造ドック)
- 〜事業内容〜(造船・鉄鋼・農産の3本柱)
- 〜2024〜2025年の最新動向〜(香焼工場本格稼働・LNG燃料船・社長交代)
- 〜業績〜(2025年3月期:過去最高水準)
- 〜まとめ〜
〜会 社 情 報〜
・会 社 名:株式会社大島造船所
・ふりがな:かぶしきがいしゃおおしまぞうせんしょ
・代 表 者:山口 眞(やまぐち しん)代表取締役社長(2024年6月28日就任/住友商事出身者として初の社長)
前社長の平賀英一氏は2024年6月退任
・U R L:https://jp.osy.co.jp/
・本 社:長崎県西海市大島町1605-1(大島工場)
・他 拠 点:香焼工場(旧三菱重工業㈱ 長崎造船所 香焼工場)※こうやぎ
東京、大阪、広島、ハノイ、ロンドン等に事務所(営業所)
・関連会社:㈱相浦機械(クレーン等製造)
㈱オリーブベイホテル(ホテル)
大島酒造㈱(酒製造)
大島エンジニアリング㈱(設計)
大島総合サービス㈱(人材派遣)
有限会社ダイゾーテック(設計の海外法人)
Oshima Shipbuilding Europe Limited(イギリス法人)
・株 主:㈱ダイゾー、住友商事㈱、住友重機械工業㈱
2024年6月の社長交代は注目ポイント。住友商事出身の山口眞氏が社長に就任したことで、株主・住友商事との連携強化、海外営業力・資金調達力の更なる強化が進む構えです。「住商出身者として初の大島造船所社長」という事実は、住友グループ内での大島造船所の戦略的位置づけが一段上がったことを示しています(出典:海事プレス2024/6・日本海事新聞)。
〜会 社 の 特 長〜
大島造船所は売上規模で国内3位に位置する大手造船会社です。バルク船に特化したスタイルで、日本国内で建造されるバルク船のシェアは実に約25%!日本で新造されるバルクの約4隻に1隻が大島造船所製、という規模感です。
三菱重工から香焼工場を取得するまでは1本の建造ドックでしたが、これがとにかく広い。大きさは長さ535m×幅80m×深さ13m。1,200tゴライアスクレーンを配置し、最大で4隻同時建造が可能という規模です。
ドックサイドでマラソン大会ができそうなほど広いΣ(゚Д゚)
大島造船所は鋼材搬入から加工・組立・塗装・艤装が超効率的に進むよう、S47年(1972年)の設立当初から綿密に工場レイアウトを計画。多くの造船所が設備更新や土地拡大で効率的レイアウトから離れていく中、大島はシンプルかつ最効率の建造を維持しているのが大きな差別化要因です。
結果として日本トップクラスの建造効率と更なる拡大余地を両立しています。
2022年12月に取得した香焼工場の建造ドックは国内最大級(長さ990m×幅100m)。大島工場のドックよりさらに広く、ここにも1,200tゴライアスクレーンがあります。1,330tゴライアスクレーン3台を持つ今治造船と並ぶ規模感で、長崎の地から日本の建造能力を引き上げる存在になりました。
また、ウインドチャレンジャー(硬翼帆式風力推進装置)搭載船の建造、電池駆動船の開発、LNG・アンモニア燃料船への対応など、設計・技術力も国内トップクラス。
住友系の株主がいることから社会的な信用度も高く、住友のリソースを活用した営業力・資金調達力は他造船会社にはない大島造船所特有の強みです。
〜事 業 内 容〜(造船・鉄鋼・農産の3本柱)
造船事業
3〜8万トン級のバルクキャリア(ばら積み貨物船)建造が中心。一時期コンテナ船参入のニュースもありましたが、現在の建造実績はバルクキャリア一本に集中している状況です。バルク特化+連続建造による効率化が、大島造船所の収益基盤を支えています。
鉄鋼事業
橋梁や海洋構造物(浮桟橋・防波堤など)を製作。九州のインフラを支える重要な役割を担っています。
農産事業
30年以上トマトを栽培し、長崎県の特産品に育て上げました。トマトジュースやメロン栽培など新たな取り組みも展開中。「造船所がトマトを作っている」というギャップは大島造船所ならではの個性です。
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〜2024〜2025年の最新動向〜
① 香焼工場の本格稼働(2024年7月〜)
2022年12月に三菱重工から取得した香焼工場で、2024年7月に第1番船を引渡し。当面は年間3〜4隻の引渡しペースで稼働しています。
2025年度は香焼工場で4隻の引渡し予定(公式記者会見)。さらに業界紙報道では2028年から香焼工場で本格的な増産フェーズに入る計画が示されており、長崎の地での建造能力が一段と引き上げられる見通しです。
三菱重工内では「負の遺産」と呼ばれていた1,200tゴライアスクレーンが、いまや大島造船所のフラッグシップ拠点で日本のバルク建造を支える存在になりました。
② LNG燃料船シリーズの量産(2026年末までに4隻竣工予定)
大島造船所は2023年度に日本郵船向けにLNG主燃料の大型石炭専用船を初引渡し。同社からは現在2隻目・3隻目も発注済で、3隻目には内製した燃料タンクを搭載する計画です。
さらに商船三井からも新造1隻の契約を受注しており、2026年末までに大島造船所製のLNG燃料船は累計4隻が竣工する見通しです(出典:公式記者会見)。
新燃料船分野で日本郵船・商船三井という邦船大手2社の継続発注を獲得している点は、大島造船所の技術力への信頼を示す好材料です。
③ ウインドチャレンジャー搭載船「Green Winds」竣工(2024年7月)
2024年7月10日、ウインドチャレンジャー(硬翼帆式風力推進装置)搭載の64型ウルトラマックスばら積み船「Green Winds」が大島造船所で竣工し、商船三井に引き渡されました(出典:商船三井公式リリース)。同シリーズは風力を補助動力として活用する次世代環境船で、世界の脱炭素海運を先導する象徴的な案件のひとつです。
④ 大島工場 隣接地取得による拡張
2023年末に報じられた大島工場の隣接工業用地の取得は、最終調整段階に入っています。これによりゴライアスクレーンの軌道延長、内業工場の追加設置、関連企業の誘致が可能となり、「バルクの大島」をさらに強固にする土台が整います。
〜業 績〜(2025年3月期:過去最高水準)
| 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | |
| 売 上 高 | 109,545 | 115,933 | 129,592 | 約164,378※ | 203,733(+23.9%) |
| 当期純利益 | 1,741 | ▲14,636 | ▲9,265 | 約14,427※ | 24,814(+72%) |
※2024年3月期の数値は、2025年3月期の公表値と前年比成長率(売上+23.9%/純利益+72%)からの逆算値。一次情報での確認は今後の追記対象です。
2025年3月期(第38期)の決算は、売上高 約2,037億円(+23.9%)/純利益 約248億円(+72%)と過去最高水準に到達(出典:官報決算データベース/PR TIMES決算公告)。
ポイントは3つです:
- 船価上昇+円安効果──業界全体に効いた追い風が、バルク連続建造のスケールに直接効く構造に
- 香焼工場稼働──第1番船引渡し後、追加引渡しで売上計上が積み上がる
- 新燃料船の貢献──LNG燃料船シリーズなど高付加価値船が利益率を底上げ
2022年・2023年3月期は2期連続赤字で苦しい時期もありましたが、船価回復・円安・香焼取得効果が全部効いた2024年度〜2025年3月期で完全復活。住友グループの後ろ盾も含めて、ここから数年は再投資フェーズに入ると見て良いでしょう。
〜ま と め〜
2024〜2025年の大島造船所は、「住商出身の山口社長就任」「香焼工場の本格稼働」「LNG燃料船の量産」「過去最高益」と、すべての歯車が一斉に噛み合った1〜2年でした。
「バルクの大島」という確固たるブランドに、住友グループの営業・資金力、香焼工場という国内最大級の建造能力、そして新燃料船という未来の柱が揃いつつあります。
規模を追わずバルク1本で勝負した過去の選択が、いま「特化した強さ」として収益に反映している。これが大島造船所の物語です。
橋もトマトもお酒もホテルも作る、ちょっと変わった造船会社。
そんな大島造船所から、これからも目が離せません!
ごあんぜんに!
出典
- 大島造船所 公式サイト・記者会見資料(2025/9/4)
- 海事プレス「山口副社長が社長に就任 大島造船所、住商出身者で初」(2024/6)
- 日本海事新聞「大島造船所、新社長に山口副社長が昇格」(2024/6)
- 海事プレス「28年から香焼工場で増産へ 大島造船所、受注は今期も高水準見込む」(2024/9)
- 商船三井 公式リリース「ウインドチャレンジャー搭載2隻目『Green Winds』竣工」(2024/8)
- 官報決算データベース/PR TIMES「株式会社大島造船所 第38期決算公告」(2025年3月期)
- 日本経済新聞「大島造船所の長崎・香焼工場が開所 三菱重工業から取得」(2024/4)
- 関連記事:日本の造船業界 再編マップ完全ガイド / 【就活生向け】船種の基礎知識ぜんぶわかる
以上


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