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造船・舶用に関わる人の必修ニュース 2026年9月第4週|原子力商船の船体「日本最優先」・中小造船は手持ち3.9年分・英船主が福岡造に発注

造船トピックス
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今週(2026年9月21日〜25日)の造船・舶用業界は、5連休明けの短い週ながら「日本の建造力に世界から声がかかった週」でした。米国の原子力商船プロジェクトを進めるコアパワーのCEOが「船体建造は日本を最優先する」と明言し、英国の船主大手は約3年ぶりに日本の造船所へ自社船を発注。国内では中小造船所の手持ち工事が約3.9年分に積み上がり、国交省は舶用メーカー3件の事業基盤強化計画を認定しました。今週の要点だけをサクッと押さえたい方は、この記事1本でOKです。

各トピックは「何が起きたか」→「なぜ重要か」の順で、業界初心者の方にも分かるように解説します。

※本記事は日本海事新聞 電子版の2026年9月25日付および9月28日付(先行配信分)各記事ほか、公開情報に基づき作成しています。数値は各記事の公表時点のものです。

📖 この記事の目次(クリックでジャンプ)

1. 原子力商船の船体、「日本を最優先」──コアパワーCEOが明言、来年5月に最終判断

【何が起きた?】海事産業への原子力導入に取り組むコアパワーは、米船籍の原子力推進商船の建造に向け、2028年から米国内で専用ヤードの建造開始を目指しています。船体やシステムは米国の同盟国の造船所で建造し、専用ヤードで原子炉の搭載などを行う方針で、ミカル・ボーCEOは「船体建造は日本を最優先する」との考えを示しました。さらに「日本での船体建造が最優先であり、韓国は『プランB』(第二案)だ」とも述べています。コアパワーには造船所・商社など日本企業約20社がすでに出資しており、先ごろ造船関連企業・海運会社・金融機関など6〜7社で協業コンソーシアムを設立。浮体式原子力発電所(FNPP)や原子力推進商船の「非原子力部分(船体・諸システム)」を日本で建造できるかを調査し、2027年5月までに最終判断します(日本海事新聞9月28日付1面)。

【なぜ重要?】米国の統合ヤードは200以上の候補地から8カ所に絞り込み済みで、年末までに3カ所を選定。最初の案件はFNPPが有力で、ボーCEOは「OECD(経済協力開発機構)諸国のFNPP市場は2・5兆ドル超という巨大市場だ」と強調しています。コンソーシアムでは日本国内の休眠・不稼働施設などの活用も議論し、日本の各省庁とも対話を進めているといいます。日本国内の建造施設整備には、日米が合意した約5,500億ドルの貿易協定の枠組みでの資金活用を両国政府に働きかける考え。9月は米新興と尾道造船の無人揚陸艇、日米のAI造船協議に続き、米国発の案件が「日本の船台」を指名する流れが一段と鮮明になりました。ただし最終判断は来年5月で、実現性の調査はこれから──期待と現実の距離は冷静に見ておきたいところです(後段は筆者の見立てです)。

2. 中小造船所の手持ち工事は約3.92年分──外航15社は3.77年分

【何が起きた?】日本中小型造船工業会が9月24日に発表した会員造船所(41社が回答)の手持ち工事量は、6月末時点で約3.92年分となりました。船台予約など本契約に至っていない分を除いた建造契約ベースで、直近の手持ち工事量(総トン数)を、年間竣工量の直近7年平均で割って算出しています。内訳は、主に外航船を手掛ける15社が3.77年分、主に内航船を建造する26社が2.69年分。中小造工は、2025年3月以降、内航・外航とも手持ち工事量の増加傾向が続いており、造船業界の高い操業状況が継続するとみています(日本海事新聞9月25日付2面)。

区分(6月末・建造契約ベース)回答社数手持ち工事量
会員全体41社約3.92年分
主に外航船を建造15社3.77年分
主に内航船を建造26社2.69年分

※参考までに、上場造船の名村造船所は新造船の受注残4,776.6億円・51隻を抱え、通期売上計画の約2.8年分に相当します(当ブログ計算・算出方法は異なります)。大手から中小まで「数年先まで埋まっている」状態が共通しています。

【なぜ重要?】「約4年先まで仕事が埋まっている」という数字は、大手だけでなく中小・中堅の造船所まで好況が行き渡っていることを示します。ここで思い出したいのが、先週お伝えした瀬戸内の造船・舶用40社調査で「90%が人材確保を経営課題に挙げた」という結果(先週の必修ニュース)。仕事は4年分あるのに、造る人が足りない──建造能力2倍計画の本当の勝負どころは、設備より人材にあることが改めて浮き彫りになります(この段落は筆者の見立てを含みます)。

3. 英ユニオン・マリタイム、福岡造船に約3年ぶりの自社船発注

【何が起きた?】英国の船主大手ユニオン・マリタイムが、福岡造船に1万9,900重量トン型ケミカルタンカー2隻を新造発注しました。日本での自社船発注は約3年ぶりで、2028〜29年の竣工予定。さらに日本船主から4万重量トン型ハンディサイズ2隻(今治造船で27年と29年に竣工予定)の長期用船も決め、2023年秋の日本法人設立後に日本船主から長期用船した新造船はバルカーを中心に26隻に達しました(日本海事新聞9月25日付1面)。

【なぜ重要?】同社は基幹船隊100隻強(タンカー80隻強・バルカー15隻前後・オフショア船6隻)と80隻近い新造発注残を抱える急成長の船主で、自社船の発注は中国造船所が中心(最近では蕪湖造船廠にニューカッスルマックスバルカー2隻、靖江南洋造船にMR型プロダクト船2隻など)。その中で日本にもケミカル船を発注し、さらに日本船主との長期用船・セール&リースバック・JOLCOなど日本の「船主×金融」の仕組みを積極的に使っているのが特徴です。海外船主にとって日本は「高品質な船台」であると同時に「資金と船を供給してくれるパートナー」──日本海事クラスター全体が評価されている好例と言えます(後段は筆者の見立てです)。

4. 舶用メーカー3件の事業基盤強化計画を認定──大洋電機・常石鉄工・シンコー

【何が起きた?】国土交通省海事局は9月25日、海事産業強化法に基づき、造船・舶用事業者の事業基盤強化計画3件を新たに認定しました(日本海事新聞9月28日付2面)。

事業者計画の中身計画期間
大洋電機永久磁石(PM)式の軸発電機・モーターの設計〜製造・試験の自社一貫体制を構築。高効率・小型・軽量な給電・電気推進システムを開発・供給2026年8月〜30年10月
常石鉄工・寿鉄工完全子会社化した両社の一体運営。搬送設備や配管加工・溶接の自動化設備を導入し生産性・品質を向上2026年8月〜30年12月
シンコーアンモニア・LNGの燃料供給用ディープウェル型ポンプを開発・製造。新工場建設と検査体制・生産設備の増強2026年9月〜30年10月

【なぜ重要?】造船業再生基金の認定が「造船所」の設備を対象にしているのに対し、こちらは舶用機器メーカーの生産性向上を後押しする制度です。電気推進、配管の自動溶接、次世代燃料ポンプ──いずれも建造量が増えたときにボトルネックになりやすい領域。特にシンコーのポンプは、国内の燃料供給システムメーカーとともに「オールジャパン」での市場展開を目指すとしており、アンモニア・LNG燃料船の国産サプライチェーンを厚くする動きです。

5. 国産メタノール燃料船「国隆丸」竣工、国交相は日本籍船の増加に意欲

【何が起きた?】三菱ガス化学・国華産業・阪神内燃機工業の3社は9月25日、国華産業が発注したメタノール専焼主機関搭載のケミカルタンカー「国隆丸」が興亜産業(香川県)で竣工し、24日に木江港(広島県)で初回のメタノールバンカリング(燃料供給)を行ったと発表しました。主機関は阪神内燃機工業製で、重油燃料船と比べ約17.5%のCO2排出削減を見込みます。初回供給では三菱ガス化学・新潟工場で生産した国産バイオメタノールも一部供給。今後は三菱ガス化学が用船し、国内のメタノール輸送に加え、メタノールバンカリング船の役割も担います(日本海事新聞9月28日付1面)。

同じ週、就任したばかりの井林辰憲国土交通相は専門紙向け会見で、日本籍船を「安定的な国際海上輸送の確保」の「中核となるべき存在だ」と述べ、税制改正に加えて制度改正も視野に確保に注力する考えを示しました。トン数標準税制については、かつて小委員会の事務局を務めた経験から「大変思い入れのある税制だ」と語り、日本船主協会が求める転籍手続きの簡素化なども「スピード感を持って進めていきたい」としています(同2面)。

【なぜ重要?】国隆丸は載貨重量1,223トンの小型船ですが、エンジン・燃料・供給までを国内企業でつないだことに意味があります。先週の世界初のアンモニア燃料STS供給、J-ENGの水素エンジンと並べると、日本は次世代燃料で「船を造る」だけでなく「燃料を届ける」仕組みまで同時に立ち上げていることが分かります。新大臣の日本籍船への意欲と合わせ、国策としての海事産業強化が続く流れは変わりそうにありません(この段落は筆者の見立てです)。

6. 今週の短信──再生炭素繊維プロペラ、郵船のSOV発注ほか

  • 豊田自動織機×ナカシマプロペラ、再生炭素繊維の船舶用CFRPプロペラがNKの製造法承認を取得──廃棄予定の炭素繊維を紡績した糸の3次元織物を材料に使用。リサイクル炭素繊維を構造体に適用するのは世界初になるという(9月28日付)
  • 日本郵船、洋上風力向けSOV(サービス・オペレーション・ベッセル)1隻を新造発注──シンガポールのパックスオーシャン・グループが受注、2029年ごろ竣工予定。台湾などアジア・大洋州の洋上風力に投入(9月25日発表・28日付)
  • 川崎汽船、ペトロナス向け17万4,000立方メートル型LNG船「Puteri Kelantan」が竣工──中国の滬東中華造船で建造、姉妹船は11月竣工予定(9月24日発表・28日付)
  • BIMCO、2027年のコンテナ船は需給悪化と予測──25年末から27年末に船腹量が14%拡大する見通し。発注残は既存船腹の42%に当たる1,400万TEU超で、27年単年の竣工量は320万TEUと突出(9月25日付)
  • 今治造船の本社・今治工場がNHK「有吉のお金発見 突撃! カネオくん」で紹介──9月27日(日)午後6時5分から放送(9月25日付)

7. 今回の用語解説

■ FNPP(浮体式原子力発電所)
船やバージ(台船)の上に小型原子炉を載せ、海上に浮かべて発電する設備。陸上に発電所を建てにくい島や沿岸地域、工業地帯に電力を供給できるとされます。コアパワーは、船体など「非原子力部分」を造船所で建造し、原子炉は専用ヤードで搭載する分業を構想しています。

■ 手持ち工事量(年分)
造船所が抱える受注残(まだ造っていない船)の量を、年間の竣工量で割った指標。「3.92年分」なら、今のペースで造り続けても約4年分の仕事がすでにあるという意味です。数値が大きいほど経営は安定しますが、新規注文の納期は遠くなります。

■ 事業基盤強化計画(海事産業強化法)
造船・舶用事業者が生産性向上のための設備投資や事業再編の計画を作り、国の認定を受ける制度。認定を受けると金融支援などを受けられ、設備投資を後押しします。

8. まとめ

  1. 原子力商船の船体建造、コアパワーが「日本を最優先」──日本企業との協業コンソーシアムで調査、2027年5月に最終判断
  2. 中小造船所の手持ち工事は約3.92年分──好況は中小まで波及。残る課題は人材
  3. 英ユニオン・マリタイムが福岡造船に約3年ぶり自社船発注──日本船主からの新造長期用船は26隻に
  4. 舶用メーカー3件の事業基盤強化計画を認定──電気推進・自動溶接・次世代燃料ポンプで供給網を強化
  5. 国産メタノール燃料船「国隆丸」竣工──エンジン・燃料・供給を国内でつなぐ。国交相は日本籍船増加に意欲
💡 ぞうせんおじさんの一言

海外から「日本で造りたい」という声が増え、中小造船所まで4年分の仕事を抱える──いまの造船業界は、働く人にとっても選べる時代です。

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本記事の出典:日本海事新聞 電子版(コアパワーの原子力商船〔9月28日付1面〕、中小造工の手持ち工事量〔9月25日付2面〕、ユニオン・マリタイムの福岡造船発注〔9月25日付1面〕、事業基盤強化計画3件の認定〔9月28日付2面〕、国隆丸竣工〔9月28日付1面〕、井林国交相会見〔9月28日付2面〕、豊田自動織機のCFRPプロペラ・日本郵船のSOV・川崎汽船のLNG船・BIMCO予測・今治造船のテレビ紹介ほか。9月28日付は先行配信分)。数値は各記事の公表時点のものです。

⚠️ 注意点

本記事は公開情報に基づく業界ニュースの解説であり、特定企業への投資勧誘を目的としたものではありません。「なぜ重要?」の解説には筆者の見立てを含みます。最新かつ正確な情報は、各社の公式発表や一次情報を必ずご確認ください。記載内容に基づいて被ったいかなるトラブル・損失についても、情報提供者は一切の責任を負いません。

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