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深読み解説|造船・舶用の上期決算を総まとめ──JMUは経常65%増、内海造船は受注残16%減で株価急落、市場が見ている「受注残」という数字

造船トピックス
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造船・舶用各社の2026年4〜9月期(上期)決算の発表が続いています。JMUは経常利益65%増、舶用エンジンのダイハツインフィニアースは営業利益66%増、三菱重工は商船の受注が好調と、数字はおおむね好調です。ところが内海造船は、利益が通期予想を超えたのに、受注残の減少で株価が12%下げました。好決算の中で、市場が何を見ているのか。各社の決算資料(PDF原本)と日本海事新聞の報道を並べて深読みします。

本記事は各社の2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信・決算資料(2026年10月28日〜11月6日発表)と、日本海事新聞の報道をもとに、今週のニュースを深掘りする解説記事です。

※本記事は2026年11月8日時点の公開情報に基づき作成しています。名村造船所・阪神内燃機工業(11月9日)、川崎重工業・三井E&S・ジャパンエンジンコーポレーション(11月10日)は上期決算の発表前のため、第1四半期の数字を参考として載せています。数値は各資料の公表時点のもので、筆者の解釈・推測には「見立て」と明示します。

📖 この記事の目次(クリックでジャンプ)

発表済み(億円)上期の売上高上期の利益(前年同期比)通期の利益予想受注残・受注
JMU(非上場、11月4日)2,094(+13%)経常262(+65%)開示見合わせ(さらなる増益を見込む)手持ち工事は4年弱
内海造船(7018)(11月5日)243.52(+12.5%)経常19.69(+45.1%)経常15(据え置き)受注残1,171.77(▲16.2%)、新造船受注1隻
ダイハツインフィニアース(6023)(10月28日)500.92(+20.6%)経常38.94(+51.9%)経常100(7月に上方修正済み)舶用機関の受注残1,228.68(+38.9%)
三菱重工業(7011)(11月6日)2兆5,232(+19.4%)事業利益2,493(+45.3%)事業利益6,000(5,400から上方修正)プラント・インフラで商船の受注が好調
IHI(7013、JMUに20%出資)(11月4日)7,793(+9.2%)営業利益1,149(+65.6%)営業利益2,700(2,500から上方修正)─
出典:日本海事新聞(JMU〔11月5日付2面〕、手持ち工事〔電子版、11月9日付1面掲載〕)、各社の中間期決算短信・決算資料・業績予想の修正のお知らせ。三菱重工・IHIはIFRSの指標で、日本基準の経常利益とは定義が異なります
これから発表(億円)第1四半期の利益(前年同期比)通期の利益予想上期決算
名村造船所(7014)経常104.75(+77.2%)経常30011月9日予定
阪神内燃機工業(6018)経常2.41(+101.7%)─11月9日予定
川崎重工業(7012)事業利益357.52(+74.3%)事業利益1,80011月10日予定
三井E&S(7003)経常116.57(+14.9%)─11月10日予定
ジャパンエンジンコーポレーション(6016)経常20.65(+9.1%)─11月10日予定
出典:各社の2027年3月期 第1四半期決算短信(7月30日〜8月7日)、発表予定日はYahoo!ファイナンス。川崎重工・三井E&Sは造船以外の事業を含む全社の数字

発表済みの会社は、いずれも前年同期比で大幅な増益です。第1四半期の数字を見る限り、これから発表する会社も好調な滑り出しでした。「造船・舶用は好決算」という全体像は、今のところはっきりしています。ただし、次の章から見るように、中身は会社ごとにかなり違います。

好調の理由として各社が挙げるのは、円安と船価の改善です。JMUは詳細を明らかにしていませんが、日本海事新聞は円安傾向の継続に加え、船価の改善などを反映したとみています(11月5日付2面)。内海造船は、外貨建て工事の利益が円安で増えたことと、生産性の向上・諸経費の削減を増益の理由に挙げています(中間期決算短信)。ダイハツIEも、舶用機関の売上が伸びた理由にエンジンとメンテナンスの売上増と為替の影響を挙げています。

注目したいのは、会社の通期予想がかなり慎重なことです。内海造船は上期の営業利益(19.27億円)が通期予想(16億円)をすでに上回ったのに、為替や中東情勢による塗料・シンナーの入手状況などが不透明だとして予想を据え置きました。予想どおりなら下期は赤字になる計算です。JMUも通期予想の開示を見合わせています。造船は数年先に引き渡す船を今つくっているため、資機材価格や為替が読みにくい局面では、会社は予想を出しにくいのだと考えられます(この一文は筆者の見立てです)。

会社受注残・手持ち工事1年前との比較決算後の株価
JMU手持ち工事4年弱(年30隻規模)─非上場
内海造船1,171億7,700万円(新造船22隻など)▲16.2%(上期の新造船受注は1隻、前年同期は7隻)11月6日に12.0%安の8,230円
ダイハツIE舶用機関関連で1,228億6,800万円+38.9%(輸出は中国向けが中心)決算後3日で2,889円→2,552円
出典:日本海事新聞(JMU〔電子版、11月9日付1面掲載〕、ダイハツIEの輸出〔10月29日付2面〕)、各社の中間期決算短信、Yahoo!ファイナンス(株価)

内海造船の株価は、利益が予想を上回ったのに、決算翌日に12%下げました。会社や報道が理由を説明しているわけではありませんが、決算短信の数字で目立つのは受注残の減少です。会社は、船主側では造船所が提示した船価では採算が合わず、納期が3年以上先になることも重なって発注に慎重になっていると説明しています(中間期決算短信)。造船は、受注残が数年後の売上になります。今の利益より、数年先の仕事量が意識された可能性がある、というのが筆者の見立てです。

一方、国内造船全体の受注は堅調です。日本船舶輸出組合の集計で、4〜9月期の輸出船の受注は447万総トン(前年同期比4%増)で、商談の中心は2030年納期に移っています(日本海事新聞11月6日付5面)。JMUの廣瀬崇社長も「受注が増加しているというより、受注が相変わらず継続しているとの認識だ」と述べています(電子版、11月9日付1面掲載)。外航の輸出船と、内海造船が得意とするフェリー・RORO船とでは、船主も需要も違う点には注意が必要です(この一文は筆者の見立てです)。

舶用エンジンのダイハツIEは受注残が39%増えたものの、決算後3日間で株価は約12%下げました。7〜9月の営業利益が4〜6月より減ったことなどが意識された可能性があります(同じく筆者の見立てです)。受注残が増えるか減るかだけでなく、それを利益に変える力まで市場は見ていると言えそうです。各社の詳細は内海造船(7018)・ダイハツインフィニアース(6023)の解説記事で読み解いています。

三菱重工業は11月6日、通期の事業利益予想を5,400億円から6,000億円に引き上げました。主にエナジーと航空・防衛・宇宙の工事が順調に進んだことと、GTCC(ガスタービン・コンバインドサイクル発電)などの採算改善によるものです(業績予想の修正に関するお知らせ)。商船は「プラント・インフラ」セグメントに含まれ、決算説明資料では、このセグメントの受注はエンジニアリング、製鉄機械とともに商船が好調だったとしています。

同じ資料では、今後見込む主な成長投資として、GTCC(5,000億円規模)、防衛(2,500億円)などと並び、商船に1,000億円規模(高密度艤装船・船体ブロックの建造能力)を挙げています。三菱重工は3,000億円を上限とする自社株買いも発表しました(11月6日のお知らせ)。総合重工にとって造船は利益の柱ではありませんが、建造能力を増やす投資の対象に入っていることは、造船業再生の流れを示す材料です(この一文は筆者の見立てです)。

JMUも、津・有明・呉の3事業所でクレーンの能力増強や船体ブロックの大型化を進めています。廣瀬社長は、造船業再生基金を使う条件として建造能力を2024年比で5割以上にすることがあり、まずその達成を目指すと説明しました(日本海事新聞 電子版、11月9日付1面掲載)。IHIはJMU株の20%を持つ株主で、重工各社の見方はIHI(7013)の株価・配当・今後・三菱重工の銘柄ガイドで解説しています。

  • 為替──各社の増益には円安が効いています。内海造船は外貨建て工事の利益増を、ダイハツIEは為替の影響を増収の理由に挙げています。円高に振れれば逆風です
  • 迂回航路の解消──危険地域を避けるための迂回で1隻当たりの運航距離が伸び、それが船腹不足につながっているとの指摘があります。この要因がなくなれば船腹需給に影響する可能性があります(日本海事新聞11月6日付5面、JMU廣瀬社長のインタビュー)
  • 燃料ルール(NZF)──11月30日からのIMOのMEPC85で、温室効果ガス削減ルールの扱いが焦点です。廣瀬社長は、仮に採択されれば燃料転換が進むとしつつ、受発注の動きが止まることはないと考えると述べています
  • 資機材の調達──内海造船は中東情勢による塗料・シンナーの入手状況を、通期予想を据え置いた理由に挙げています

今の好決算は、円安と海運の好市況という追い風に支えられている面があります。海運大手も上方修正が相次いでいますが、川崎汽船は通期予想の前提に、ホルムズ海峡の通航再開を2027年4月以降と置いています(日本海事新聞11月5日付1面)。追い風が弱まったときに、どれだけ利益を残せるかが、各社の本当の実力になります(この段落は筆者の見立てです)。

  • 名村造船所(11月9日予定)──第1四半期は経常利益77%増。上期の受注と受注残が増えたか、通期予想(経常300億円)を見直すか
  • 川崎重工業(11月10日予定)──船舶の受注・建造の状況と、中国の合弁造船所の動き
  • 三井E&S・ジャパンエンジン(11月10日予定)──舶用エンジンの受注残が増え続けているか。中国の造船所の主機不足が追い風になっているか
  • 各社の「受注残」と「通期予想」──利益の伸びだけでなく、数年先の仕事量と、会社がどこまで強気の予想を出すか

■ 受注残(受注残高)
受注したものの、まだ売上になっていない仕事の金額。造船では船の完成・引き渡しまでの工事の進み具合に応じて売上が計上されるため、受注残は数年先までの売上の「貯金」にあたります。

■ 手持ち工事量
造船所がすでに受注し、これから建造する仕事の量。「何年分」で表すことが多く、多いほど先の仕事は安定しますが、新しい注文に提示できる納期は先になります。

■ 外貨建て工事
船価をドルなどの外貨で契約した工事。円安になると、円に換算した売上・利益が増えます。日本の造船所は輸出船が多く、為替の影響を受けやすい構造です。

  1. 造船・舶用の上期は大幅増益がそろう──JMU経常65%増、内海造船45%増、ダイハツIE52%増。円安と船価の改善が追い風
  2. 会社の通期予想は慎重──内海造船は上期で予想を超えても据え置き、JMUは開示を見合わせ
  3. 市場が見ているのは受注残──内海造船は16%減で株価12%安。ダイハツIEは39%増でも利益の伸びが問われる
  4. 重工は造船の能力増強に投資──三菱重工は商船に1,000億円規模、JMUは建造能力を2024年比5割増へ
  5. 来週は名村・川重・三井E&S・J-ENG──受注残と通期予想の見直しが焦点(見立て)
💡 ぞうせんおじさんの一言

造船の決算は、今期の利益よりも「何年先まで仕事があるか」で見ると、景色が変わります。好決算でも株価が下がる理由は、だいたいその数字に隠れています。
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本記事の出典:内海造船「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信」(2026年11月5日)、ダイハツインフィニアース「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信」(10月28日)、三菱重工業「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信」・「2026年度第2四半期決算説明資料」・「業績予想の修正に関するお知らせ」・「自己株式取得に係る事項の決定および自己株式の消却に関するお知らせ」(11月6日)、IHI「2026年度 (2027年3月期)第2四半期決算説明資料(IFRS)」(11月4日)、名村造船所・川崎重工業・三井E&S・ジャパンエンジンコーポレーション・阪神内燃機工業の「2027年3月期 第1四半期決算短信」(7月30日〜8月7日)、日本海事新聞(ダイハツIEの決算〔10月29日付2面〕、JMUの決算〔11月5日付2面〕、川崎汽船の決算〔11月5日付1面〕、国内造船の受注〔11月6日付5面〕、JMU廣瀬社長のインタビュー〔電子版、11月9日付1面掲載〕)、Yahoo!ファイナンス(株価・決算発表予定日)。いずれも原本・記事本文を直接確認。証券コードはYahoo!ファイナンスで照合。JMUは非上場です。

⚠️ 注意点

本記事は公開情報に基づく解説であり、特定企業への投資勧誘を目的としたものではありません。「深読み」の解釈・将来予想には筆者の見立てを含みます。最新かつ正確な情報は各社の公式発表をご確認ください。記載内容に基づいて被ったいかなるトラブル・損失についても、情報提供者は一切の責任を負いません。

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