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深読み解説|高炉・電炉の上期決算を総まとめ──日本製鉄は再上方修正・JFEは下方修正、電炉は8社中4社が経常赤字、明暗を分けたのは「海外」と「鉄スクラップ」

鉄鋼トピックス
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鉄鋼メーカーの2026年4〜9月期(上期)決算が、ほぼ出そろいました。高炉最大手の日本製鉄は今期2回目の上方修正、JFEホールディングスは千葉の豪雨・台風で下方修正。電炉では、上場8社のうち4社が上期に経常赤字となり、多くの会社が通期予想を引き下げました。同じ「鉄をつくる会社」なのに、なぜここまで差がついたのか。各社の決算短信・決算資料(PDF原本)を並べて深読みします。

本記事は高炉2社・電炉8社の2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信と決算資料(2026年10月23日〜11月6日発表)、業績予想の修正のお知らせ、日刊鉄鋼新聞・日刊産業新聞をもとに、今週のニュースを深掘りする解説記事です。

※本記事は2026年11月8日時点の公開情報に基づき作成しています。神戸製鋼所の上期決算は11月10日に発表予定のため、第1四半期の数字を参考として載せています。数値は各資料の公表時点のもので、筆者の解釈・推測には「見立て」と明示します。

📖 この記事の目次(クリックでジャンプ)

高炉(億円)上期の事業利益(前年同期)上期の純利益通期の事業利益予想(修正前)発表日
日本製鉄(5401)3,074(2,275)2,6297,200(6,300)↑11月5日
JFEホールディングス(5411)767(457)5371,950(2,150)↓11月6日
神戸製鋼所(5406)第1四半期の経常利益は226.63億円(前年同期比▲21.2%)。上期決算は11月10日の予定11月10日予定
出典:日本製鉄「2026年度第2四半期決算について」(11月5日)、JFEホールディングス「2026年度第2四半期決算 インベスターズ・ミーティング」資料・中間期決算短信(11月6日)、神戸製鋼所「2027年3月期 第1四半期決算短信」(8月5日)。事業利益はIFRSの指標で、日本基準の経常利益とは定義が異なります
電炉(億円)上期の売上高上期の経常損益(前年同期比)通期の経常損益予想(修正前)発表日
東京製鐵(5423)1,504.22(+12.3%)▲29.49(前年は69.83の黒字)20(10月16日に上方修正済み)10月23日
合同製鐵(5410)961.09(+2.8%)2.58(▲95.9%)25(70)↓10月30日
共英製鋼(5440)1,777.03(+14.9%)59.29(▲30.1%)90(140)↓10月30日
東京鐵鋼(5445)394.72(+7.4%)48.69(▲27.7%)100(修正なし)10月30日
大和工業(5444)840.46(+10.3%)460.71(+65.0%)955(870)↑11月2日
大阪製鐵(5449)409.51(▲15.8%)▲27.58(前年は▲13.24)▲11(10)↓11月4日
中山製鋼所(5408)752.25(▲1.8%)▲1.82(前年は29.32の黒字)16(売上・営業・経常を下方修正)↓11月5日
中部鋼鈑(5461)291.64(+25.4%)▲1.39(前年は6.52の黒字)6(据え置き。営業利益は3→8億円に上方修正)11月6日
出典:各社の2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信、合同製鐵・中部鋼鈑の業績予想の修正に関するお知らせ、日刊産業新聞・日刊鉄鋼新聞(大和工業・大阪製鐵の修正前予想)。東京製鐵は単体、ほかは連結。▲は赤字

一覧にすると、上期決算と同時に上方修正したのは日本製鉄と大和工業、下方修正はJFE・合同製鐵・共英製鋼・大阪製鐵・中山製鋼所という並びです(東京製鐵は決算前の10月16日に上方修正済み)。電炉のうち上期に経常赤字だったのは、東京製鐵・大阪製鐵・中山製鋼所・中部鋼鈑の4社でした。売上高は多くの会社で前年を上回っており、「売れているのに儲からない」のが今期の電炉の姿です(この整理は筆者の見立てです)。

日本製鉄の上方修正をけん引したのはUSスチールです。実力ベース事業利益の通期予想は7,000億円から7,700億円へ上がり、増えた700億円はすべて海外、うちUSスチールが500億円でした。国内は3,800億円で据え置きです。純利益の上方修正1,500億円のうち961億円は、米アーカンソー州の税額控除という一過性の効果です(日本製鉄の決算資料)。

JFEは、8月の千葉地区の冠水と9月の台風25号で生産が止まり、粗鋼の減産影響は年間約70万トン、事業利益への影響は年間約500億円の見込みです。中東情勢の影響も年間700億円としています(JFEの決算資料)。

在庫評価差などを除く上期の利益(億円)前年上期今期上期増減
日本製鉄(実力ベース事業利益)3,4573,133▲323
 うち国内2,5781,452▲1,126
 うち海外8781,681+803
JFE(棚卸資産評価差等除き事業利益)937447▲490
出典:日本製鉄「2026年度第2四半期決算について」、JFEホールディングス「2026年度第2四半期決算 インベスターズ・ミーティング」資料。両社の定義は同じではありません

ここが深読みポイントです。見出しの数字では明暗が分かれましたが、原料価格の変動による見かけの利益(在庫評価差)を除くと、両社とも上期の利益は前年を下回りました。日本製鉄も国内だけを見れば1,126億円の減益で、その主因はマージン(為替を含む)の1,430億円の悪化です。会社は、原燃料価格の上昇に対してひも付き分野での価格反映が遅れたことを挙げています(日本製鉄の決算資料)。高炉の差は「海外で稼ぐ柱」の有無であって、国内の鉄が楽になったわけではない、というのが筆者の読みです。

日本製鉄の決算の詳細は日本製鉄(5401)の株価・配当・今後で解説しています。

電炉各社が決算短信や修正のお知らせで挙げた理由を並べると、原因はほぼ共通しています。

会社会社が挙げた主な理由(要約)
合同製鐵鉄スクラップ価格が想定より急速に上がるなか、販売価格の改善が追いつかなかった。通期は電力会社の市場価格調整制度による電力費の値上がりなども想定
共英製鋼国内は建設用鋼材の需要が低調で、鉄スクラップ価格が想定を上回り売買価格差が縮小。海外では米国拠点で設備の老朽化による生産不調が続く
東京鐵鋼製品価格と原材料価格の差(値差)の縮小や、電力コストの上昇で減益
中部鋼鈑販売価格の改定に取り組んだが、コスト上昇分をすべては吸収できず、メタルスプレッドが縮小
中山製鋼所コスト上昇に見合う販売価格への転嫁は途上。熱延工場での火災の影響も加わった
大阪製鐵鉄スクラップ価格の上昇に対して製品値上げの浸透が遅れ、採算が悪化(日刊産業新聞)
東京製鐵7〜9月は製品出荷単価が想定どおり上がり、鉄スクラップの購入価格が想定を下回って改善。通期は営業黒字化を見込む
出典:各社の中間期決算短信・業績予想の修正に関するお知らせ、日刊産業新聞(11月5日付1面)

電炉の利益は、製品価格から主原料の鉄スクラップ価格を引いたメタルスプレッド(値差)でほぼ決まります。今期は、鉄スクラップが上がる速さに製品の値上げが追いつかず、そこに電力費の上昇と建設用鋼材の需要低迷が重なりました。合同製鐵は、建設用鋼材の需要が「歴史的な低迷期に直面」していると書いています(中間期決算短信)。

一方で、明るい兆しもあります。東京製鐵は7〜9月に営業赤字が4〜6月の約半分に縮み、中部鋼鈑は上期の結果が予想より良く、通期の営業利益予想を引き上げました(中部鋼鈑は主に棚卸資産評価差が要因と説明)。各社は値上げを続けており、下期に値上げがスクラップ高を上回れるかが焦点です(後段は筆者の見立てです)。東京製鐵のメタルスプレッドの推移は東京製鐵(5423)の株価・配当・今後、電炉業界の構造は深読み解説|電炉は本当に赤字なのかで解説しています。

電炉で、上期決算と同時に通期の経常利益予想を引き上げたのは大和工業だけです。上期の経常利益は460.71億円(前年同期比65.0%増)、通期予想は870億円から955億円へ引き上げました。ところが、上期の営業利益は2.24億円(88.7%減)しかありません。営業利益と経常利益の差のほとんどは、米国の持分法適用会社からの利益です(中間期決算短信)。

会社は、国内の鉄鋼事業について足元の厳しい収益状況に加え、収益改善に想定以上の時間を要することを織り込む一方、円安基調の継続や米国の持分法適用関連会社の業績が想定をさらに上回っているとして、通期予想を修正しました。営業利益の予想は前回より10億円少ない22億円です(中間期決算短信)。国内の稼ぎは減っても、米国の稼ぎがそれを大きく上回る構造で、日本製鉄と同じ「海外で稼ぐ」型です(この整理は筆者の見立てです)。

共英製鋼も米国に拠点を持ちますが、こちらは設備の老朽化で生産不調が続き赤字の見込みで、耐用年数の短縮に伴う減価償却費の増加も織り込んでいます。同じ「米国」でも、稼げる拠点を持つかどうかで結果は正反対です。大和工業の詳しい解説は大和工業(5444)の銘柄まとめをどうぞ。

会社今期の年間配当予想前期ポイント
日本製鉄24円24円(分割後換算)2031年3月期まで年24円が下限の方針
JFEホールディングス80円80円中期経営計画で「配当性向30%程度、ただし80円下限」
合同製鐵100円180円2031年3月期までの5年間は年100円が下限の方針
共英製鋼70円90円下方修正後も配当予想は据え置き
大和工業420円400円中間・期末とも10円増配
中部鋼鈑113円104円上期は赤字でも中間56円を実施
大阪製鐵69円(特別配当)0円普通配当は無配、中期経営計画の株主還元策として特別配当69円
東京製鐵40円50円期初から10円減配の予想
出典:各社の中間期決算短信・決算資料。東京鐵鋼(年100円予想、2026年4月に1株→3株の株式分割)、中山製鋼所(年20円予想)は表から省略

利益は落ちても、配当の下限を決めている会社が多いのが今の鉄鋼業界の特徴です。日本製鉄・JFE・合同製鐵はいずれも下限配当を掲げ、業績が落ちても一定の配当を出す姿勢を示しています。大阪製鐵は普通配当を無配とする一方、特別配当を出し、親会社の日本製鉄が応募する自社株の公開買い付けも決めました(日本製鉄の11月4日の発表)。業績は苦しくても株主還元は止めないという方向です(この一文は筆者の見立てです)。

  • 神戸製鋼所の上期決算(11月10日予定)──第1四半期は高炉3社で唯一の減益でした。鉄鋼・アルミと機械の複合経営がどう出るか
  • 下期の値上げの浸透──日本製鉄は下期に追加値上げを含めた価格反映を進める方針。電炉も値上げが続いており、スクラップ高を上回れるか
  • 鉄スクラップ価格──11月11日予定の関東鉄源協同組合の輸出入札が、目先の相場観を左右します
  • 電力費──合同製鐵は電力会社の市場価格調整制度による値上がりを挙げています。電炉は電力を大量に使うため、影響が大きい項目です

■ メタルスプレッド(値差)
電炉メーカーの製品の販売価格から、主原料の鉄スクラップの価格を引いた差のこと。この差が電炉の利益の源泉で、鉄スクラップが上がって製品価格が追いつかないと縮みます。

■ 持分法適用会社
出資比率がおおむね20%以上50%以下などで、経営に重要な影響を与える関連会社のこと。売上高や営業利益には入らず、利益のうち出資比率分が「持分法による投資利益」として経常利益(IFRSでは事業利益など)に加わります。大和工業の営業利益と経常利益の差は、主にこれです。

■ 在庫評価差(棚卸資産評価差)
原料価格が上がると、安いときに仕入れた在庫を使うことで見かけ上の利益が生まれ、下がると損失が出ます。この差のこと。本当の稼ぐ力を見るため、日本製鉄やJFEはこれを除いた利益も示しています。

■ 下限配当
業績にかかわらず、1株当たりの年間配当をこれ以上は下げないと会社が決めた金額。今回の決算では、日本製鉄(24円)・JFE(80円)・合同製鐵(100円)が下限を示しています。

  1. 高炉は日本製鉄が再上方修正、JFEは下方修正──差は海外の柱と災害。ただし在庫評価差を除くと両社とも前年割れ
  2. 電炉は8社中4社が上期に経常赤字──鉄スクラップ高・電力費・建設需要の低迷が共通の原因
  3. 勝ち組は「米国で稼ぐ」会社──大和工業は経常65%増で上方修正。共英製鋼は米国拠点が赤字で明暗
  4. 配当は下限で守る会社が多い──日本製鉄24円・JFE80円・合同製鐵100円が下限。大阪製鐵は特別配当
  5. 下期の焦点は値上げの浸透──値上げがスクラップ高と電力費を上回れるか(見立て)
💡 ぞうせんおじさんの一言

決算を並べてみると、「国内の鉄」はどこも苦しく、差をつけたのは海外でした。造船所が使う厚板の値上げも、こうしたメーカー側の事情と表裏一体です。
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本記事の出典:日本製鉄「2026年度第2四半期決算について」(2026年11月5日)、JFEホールディングス「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信」・「2026年度第2四半期決算 インベスターズ・ミーティング」資料(11月6日)、神戸製鋼所「2027年3月期 第1四半期決算短信」(8月5日)、東京製鐵(10月23日)・合同製鐵(10月30日)・共英製鋼(10月30日)・東京鐵鋼(10月30日)・大和工業(11月2日)・大阪製鐵(11月4日)・中山製鋼所(11月5日)・中部鋼鈑(11月6日)の「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信」、合同製鐵・中部鋼鈑の「業績予想の修正に関するお知らせ」、日本製鉄「当社子会社による自己株式の公開買付け及び当社による応募に関するお知らせ」(11月4日)、日刊鉄鋼新聞・日刊産業新聞(大和工業〔11月4日付1面〕、大阪製鐵〔11月5日付1面〕)。いずれも原本・紙面を直接確認。証券コードはYahoo!ファイナンスで照合。理由の欄は各社の説明の要約です。

⚠️ 注意点

本記事は公開情報に基づく解説であり、特定企業への投資勧誘を目的としたものではありません。「深読み」の解釈・将来予想には筆者の見立てを含みます。最新かつ正確な情報は各社の公式発表をご確認ください。記載内容に基づいて被ったいかなるトラブル・損失についても、情報提供者は一切の責任を負いません。

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