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簿記2級で読み解く造船会社の決算書|元機械メーカー営業が独学合格して分かった「受注残」と「お金のズレ」──名村造船所の決算短信で実践

おじさんの自己啓発
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「簿記2級を取ると、会社の決算書って本当に読めるようになるの?」「造船会社の決算は受注残や前受金が出てきて、何が何だかわからない」──。そんなモヤモヤを抱えている会社員の方は、意外と多いのではないでしょうか。

本記事は、元機械メーカー営業のぞうせんおじさんが、日商簿記2級に独学で合格した体験と、2026年11月時点で公開されている名村造船所(7014)の決算短信・有価証券報告書をもとに、「簿記2級の目で造船会社の決算書を読むと何が見えるのか」を実例でまとめました。合格までの失敗談も包み隠さず書いています。

※本記事の決算数値は、名村造船所「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年5月14日発表)および「有価証券報告書(2026年3月期)」の原本を直接確認したものです。試験制度は日本商工会議所の公式サイト(2026年11月閲覧)に基づきます。受験体験は筆者個人のものです。

📖 この記事の目次(クリックでジャンプ)

まずは自己紹介代わりに、ぞうせんおじさんの簿記の受験記録です。3級に受かったのは2013年2月。そこから約10年あいて、2023年に2級へ挑戦しました。3級も2級も、合格は2回目です。

📊 ぞうせんおじさんの簿記受験記録
受験時期方式結果
日商簿記3級2013年2月統一試験(紙)合格(2回目)
日商簿記2級 1回目2023年1月21日ネット試験(テストセンター)66点・不合格
日商簿記2級 2回目2023年3月18日ネット試験(テストセンター)76点・合格

※2級の勉強開始は2022年10月ごろ。いずれもスクールなしの独学です。

日本商工会議所の公式サイトによると、2級の試験時間は90分で、合格基準は70%以上。出題は商業簿記と工業簿記(原価計算を含む)から5題以内です。1回目の66点は、合格ラインまであと4点でした。

ちなみに簿記以外では、FP2級(2019年10月)と宅建試験(2021年11月合格・登録はしていません)も独学で合格し、ITパスポート(2020年8月)にも合格しています。このあたりも追って記事にしていく予定です。

3級から10年たって2級を受けた理由は、シンプルに決算書をもっと読み込めるようになりたかったからです。決算書に出てくる言葉の意味を、なんとなくではなく、ちゃんと理解したいと思いました。

きっかけは機械メーカーの営業時代の反省です。お客さんに設備を提案するとき、減価償却や相手の会社の収益構造をもっと深く理解していれば、リースや補助金の活用を、もっと的確に提案できたはずだと感じた場面がありました。正直に言うと、当時は決算書の理解もかなり浅いものでした。

製造業の営業や技術職の方なら、「この設備、お客さんの会社にとって本当に買える金額なんだろうか」「リースと購入、どっちが相手にとって得なんだろう」と迷った経験があるのではないでしょうか。ぞうせんおじさんの場合、簿記の知識があればそこをもっと深く考えられたはずだ、というのが当時の反省です。

2級の教材は、CPAラーニングと過去問だけです。CPAラーニングは、CPAエクセレントパートナーズが運営する学習サイトで、簿記検定などの講座について、公式サイトで「すべてのコンテンツを無料でご利用いただけます」と案内しています(登録から30日を過ぎて使い続けるにはアンケートへの回答が必要)。振り返っても、この組み合わせは自分に合っていて、選択は間違っていなかったと思います。

📊 2級の勉強スタイル
  • 期間:2022年10月ごろ開始 → 2023年3月合格
  • 平日:帰宅後に最低でも1時間
  • 土日:1日3時間程度
  • 教材:CPAラーニング+過去問(スクール・有料講座は使っていません)
  • 直前期:いろいろなパターンの過去問をとにかくこなす

ちなみに3級のときは、帰宅後にやったりやらなかったりで、勉強期間は半年ほどでした。2級では平日も最低1時間は机に向かうようにしました。

📚 これから独学する方への教材のすすめ

独学で始めるなら、まずはCPAラーニングをおすすめします。ぞうせんおじさんが実際に使って合格した教材で、公式サイトによるとすべてのコンテンツを無料で利用できます(登録から30日を過ぎて使い続けるにはアンケートへの回答が必要)。ぞうせんおじさんは、このCPAラーニングと過去問だけで2級に合格しました。

そのうえで、「紙のテキストに書き込みながら覚えたい」「過去問題集を手元に置いて何周もしたい」という方は、資格・検定試験の対策本を出しているTAC出版の書籍も探してみてください。

得意だと思っていた工業簿記で0点

1回目の不合格の原因ははっきりしています。得意だと思っていた工業簿記の大問(第5問)で、初めて見る形式の問題が出て困惑し、0点でした。合計66点で不合格です。2回目もこの第5問は6点で、結果的に最後まで苦戦しました。

一方で、難しいと言われる連結会計は、難しく感じたもののつまずくほどではありませんでした。商業簿記も工業簿記も仕訳問題は高得点で、結果を見ると「得意」と思っていた工業簿記より、商業簿記のほうが点数は安定していたのです。

😟 1回目の敗因(自己分析)
  • 過去問のやりこみ不足──見たことのない形式に対応できなかった
  • 根本の理解不足──解き方を覚えていただけで、「なぜそうなるか」が分かっていなかった

2回目に向けては、とにかく多くのパターンの過去問をこなしました。

ぞうせんおじさんの場合、2回目は多くのパターンの過去問をこなして合格できました。問題集を買い足して演習量を増やしたい方は、資格の本を扱うTAC出版もチェックしてみてください。

ここからが本題です。2級に受かってから一番変わったのは、決算書全体を斜め読みできるようになったことでした。言葉の意味が分かるので、全体像がすんなり頭に入ってきます。その目で、上場している造船会社の名村造船所(7014)の2026年3月期決算を読んでみます。

📊 名村造船所 2026年3月期(連結)の損益
項目金額売上高に対する割合
売上高1,590.35億円100%
売上原価1,228.57億円約77.3%
売上総利益361.78億円約22.7%
営業利益280.85億円約17.7%

※出典:名村造船所 2026年3月期 決算短信。割合は当ブログの単純計算。

簿記で最初に見るクセがつくのが原価率(売上原価÷売上高)です。名村造船所は約77%。つまり船を1億円で売ると、約7,700万円が造るための費用に消えている計算です。手元に残る売上総利益は約23%です。

そこから販売費などを引いた営業利益率は約17.7%です。決算短信は、新造船事業が増収増益となった理由として、ハンディ型から大型のばら積み船(バルカー)も造る体制への移行が順調に進んだこと、原価削減活動の効果、円安基調が続いたことを挙げています。くわしい業績や株価の見方は名村造船所(7014)の銘柄ガイドと2026年4〜6月期決算まとめで解説しています。

工業簿記の「材料費・労務費・経費」がそのまま出てくる

工業簿記(原価計算)の知識は、業界を見るうえでとても役に立ちました。工業簿記では原価を材料費・労務費・経費の3つに分けて考えます。名村造船所の有価証券報告書を読むと、船の原価の見積もりについて「見積工事原価総額は材料費、労務費および経費で構成されます」と、まさにこの言葉で説明されています。

さらに、材料費は原材料価格の変動の影響を受け、労務費と経費は原価低減策の効果や工程の進み具合に左右される、とも書かれています。原価の構成が分かっていると、「鋼材が値上がりしたら、どこにどう効くのか」をイメージしやすくなります。

ぞうせんおじさんが造船会社の決算(とくに受注残)を読みにくいと感じた理由は、受注残と売上の時期がズレることです。

名村造船所の有価証券報告書には、新造船は「受注から竣工引渡しまで通常およそ2~3年の期間を要する」とあります。今日受注した船が売上になりきるのは2〜3年先、ということです。

📊 新造船事業の「受注残」と「売上」(2026年3月期)
  • 新造船事業の売上高:1,256.43億円
  • 期末の受注残高:4,220.73億円(前年同期比7.1%増)
  • 当期の完工:大型ばら積み船4隻、ハンディ型ばら積み船等17隻
  • 当期の受注:大型ばら積み船10隻、ハンディ型ばら積み船5隻

※出典:名村造船所 2026年3月期 決算短信。受注残は新造船事業の売上高の約3.4年分(当ブログの単純計算)。

売上は「工事の進み具合」に応じて少しずつ計上される

では、2〜3年かかる船の売上は、いつ計上されるのでしょうか。名村造船所は、新造船の売上を工事の進み具合(進捗度)に応じて、工事期間にわたって少しずつ計上しています。進捗度は「インプット法」で測り、期末までに実際にかかった原価が、見積もった原価の総額に占める割合で決めている、と有価証券報告書に書かれています。2026年3月期の新造船事業の外部向け売上のうち、1,252.48億円がこの方法で計上されたものです。

かみくだくと、「全部で100億円かかる見込みの船に、今期30億円の原価を使ったら、工事は30%進んだとみなして、船の値段の30%を今期の売上にする」というイメージです(数字は説明用のたとえです)。だから、大きな受注を取った期に売上がドンと増えるわけではありません。受注残は「これから2〜3年かけて売上になっていく仕事の在庫」と読むのがコツです。

なお、有価証券報告書の注記では、まだ終わっていない仕事のうち1年以内に売上になる見込みが1,471.18億円、1年超が2,356.07億円(合計3,827.25億円)と示されています。決算短信の「受注残高」とは集計の定義が異なるため金額は一致しませんが、「来期の売上の目安」を知る手がかりになります。造船用語に自信がない方は、造船用語集もあわせてどうぞ。

簿記では、「利益」と「お金(キャッシュ)」は別ものと考えます。売上を計上しても、お金が入ってくるのはもっと後かもしれない。造船はこのズレが大きい業種です。

名村造船所の決算短信には、こんな一文があります。

新造船事業においては進水時までに原価の85%の支払いが発生しているにも関わらず入金額が30~40%にすぎず

名村造船所 2026年3月期 決算短信

つまり、船の材料費や人件費は先にどんどん出ていくのに、お客さん(船主)からの入金は後ろに寄っている、ということです。決算短信は続けて、建造期間が長く船価も大きい大型船ほど、造船所側の資金負担が重くなるとも書いています。原価率が高く、お金の回収までが長い──この組み合わせは、キャッシュフローを悪くしやすい構造です。簿記を学んでこの数字を見たとき、ぞうせんおじさんは「造船は資金繰りが大変な商売なんだな」と分かりました。

貸借対照表の「契約資産」と「契約負債」で見る

このズレは、貸借対照表(バランスシート)にも表れます。名村造船所は、進行中の工事の対価を契約資産(売上は計上したが、まだ請求・入金できていない分)として、船主からの前受金を契約負債(お金は受け取ったが、まだ工事で返していない分)として計上しています。

📊 名村造船所のお金まわり(2026年3月期・連結)
項目期首(2025年3月末)期末(2026年3月末)
契約資産270.85億円366.18億円
契約負債(前受金)408.07億円570.58億円
現金及び現金同等物901.40億円1,187.24億円
  • 営業キャッシュフロー:388.47億円の増加(うち契約負債の増加で162.15億円)
  • 投資キャッシュフロー:98.10億円の減少
  • フリーキャッシュフロー(営業CF+投資CF):約290.37億円(当ブログの単純計算)

※出典:名村造船所 2026年3月期 決算短信・有価証券報告書(収益認識関係の注記)。

ここで面白いのは、2026年3月期の名村造船所は、むしろお金がたっぷり入っていることです。決算短信は、営業キャッシュフローが増えた理由として「新造船の受注増による契約負債の増加等」を挙げています。受注が好調で新しい船の前受金が積み上がり、手元の現金は前の期から285.84億円増えました。

簿記の目で見ると、ここに注意点があります。契約負債は「これから船を造って返す」義務なので、受注のペースが落ちれば新しい前受金は入らず、「進水までは出ていくお金が先」の構造が表に出てきます。今の潤沢なキャッシュは、好調な受注に支えられている面がある──というのが、ぞうせんおじさんの読み方です(この部分は筆者の見立てです)。実際に決算短信でも、造船業特有の大きな不況の波に備えて厚めに現預金を持つ方針が示されています。

正直に書いておくと、簿記2級を取ったからといって、決算書のプロになれるわけではありません。不自然な決算書を見ても、すぐに違和感を覚えるほどのレベルには、ぞうせんおじさんはなれていません。

たとえば造船の売上は、先ほどの「見積もった原価の総額」をもとに計算されます。名村造船所の有価証券報告書も、原材料価格の高騰や生産計画の変更、原価低減の未達などで見積もりの見直しが必要になった場合、翌期の売上高に重要な影響を与える可能性がある、と注意を書いています。この見積もりが妥当かどうかを外から判断するのは、2級の知識だけでは難しいところです。

😊 それでも2級でここまで読める
  • 原価率・利益率から「どれくらい重たい商売か」をつかめる
  • 受注残と売上のズレを「仕事の在庫」として読める
  • 契約資産・契約負債・キャッシュフローから「お金の流れ」を追える
  • 工業簿記の原価の考え方で、鋼材価格や人件費の影響をイメージできる

言葉の意味が分かるだけで、決算書の全体像はすんなり頭に入るようになります。造船会社の決算を実際に読み比べたい方は、内海造船(7018)の銘柄ガイドも参考になります。

これから簿記2級を受ける方、特に製造業で働く方に言いたいのは、知っておいて損はないということです。損益計算書やバランスシートを見るのが楽しくなります。

独学でいける人、講座を使ったほうがいい人

ぞうせんおじさんの感覚では、自分に厳しくできる人は独学で問題ありません。逆に、つい甘えが出てしまう人は、講座を使って強制的に学ぶ機会を作ったほうがいいと思います。ただ、どちらにしても、そもそも簿記を楽しいと思えないと続けるのは厳しいかもしれません。

なお、ぞうせんおじさん自身は有料講座を使っていません。独学派には、無料で使えるCPAラーニングと過去問の組み合わせをおすすめします。講座が気になる方は、各社の無料体験で自分に合うかどうかを比べてから決めるのがおすすめです。資格をキャリアに生かしたい方は、造船・鉄鋼業界の就職・転職おすすめサービスや造船・鉄鋼 年収ランキングもあわせて読んでみてください。

😟 ぞうせんおじさんの失敗から言えること
  • 過去問は、いろいろなパターンを数多く解いておく
  • 「得意」と思っている分野でも、初めて見る形式の問題は出る。工業簿記も幅広く過去問を解いておく
  • 解き方の暗記だけでなく、「なぜそうなるか」まで理解しておく

  1. 簿記2級は独学で合格できた──CPAラーニング+過去問、平日1時間・土日3時間。ただし1回目は66点で不合格
  2. 敗因は工業簿記の第5問──初見の形式で0点。過去問のやりこみと根本の理解が足りなかった
  3. 原価率で商売の重さが分かる──名村造船所の原価率は約77%。原価は材料費・労務費・経費の考え方で読める
  4. 受注残は「2〜3年分の仕事の在庫」──売上は工事の進み具合に応じて計上されるので、受注と売上の時期がズレる
  5. 利益とお金は別もの──進水までに原価の85%を払い、入金は30〜40%。今は前受金の積み上がりで現金が潤沢
💡 ぞうせんおじさんの一言(資格の勉強)

簿記2級は、決算書を読む力を身につけたい会社員にとって、知っておいて損はない資格です。ぞうせんおじさんのように独学で挑戦するなら、まずは無料のCPAラーニングで全体を学び、過去問で仕上げるのがおすすめです。紙の教材や問題集もそろえたい方は、TAC出版の資格本もチェックしてみてください。

💡 ぞうせんおじさんの一言

決算書が読めるようになると、実際に株を買って会社を応援してみたくなるかもしれません。そんなとき、ぞうせんおじさんが率直におすすめできる証券口座を3つご紹介します。

一番のおすすめは楽天証券。楽天ポイントで投資できて取扱い銘柄も豊富、手数料も業界トップクラスの安さで、初心者から中級者まで間違いのない選択です。

「みんなと同じはちょっと…」という方にはDMM 株。シンプルな手数料体系と独自のサービスで、人と違う口座を持ちたい方にぴったりです。

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本記事の出典:名村造船所「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年5月14日発表)、「有価証券報告書(2026年3月期)」(重要な会計上の見積り、収益認識関係の注記)(いずれも同社IRサイトのPDF原本を直接確認)。日本商工会議所 商工会議所の検定試験「簿記2級 試験科目・注意事項」(試験時間・合格基準・出題範囲、2026年11月閲覧)。CPAラーニング公式サイト(運営会社・利用料金、2026年11月閲覧)。Yahoo!ファイナンス(証券コード照合:名村造船所7014)。原価率・利益率・受注残の年数換算・フリーキャッシュフロー・現金の増加額は上記数値からの当ブログの単純計算です。受験記録・勉強法・感想は筆者個人の体験です。

⚠️ 注意点

本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄への投資勧誘を目的としたものではありません。教材の紹介は筆者個人の受験体験と感想に基づくもので、合格を保証するものではありません。試験制度は変更されることがあるため、受験の際は必ず日本商工会議所の公式サイトで最新情報をご確認ください。決算数値は公表時点のものです。記載内容に基づいて被ったいかなるトラブル・損失についても、情報提供者は一切の責任を負いません。

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