「造船関係の話を読んでいると、聞き慣れない用語が出てきて困る…」「DWT?VLCC?LNG二元燃料船って?」──。造船業界の記事や決算資料を読んでみたい就活生・投資家・業界外の方は、用語の壁に戸惑うことも多いはずです。
本記事は2026年5月時点の最新情報をもとに、造船業界でよく出てくる基本用語を「船種」「サイズ」「工程」「設備」「業界・市場」「最新トレンド」の6カテゴリーに整理して、業界外の方にもわかりやすく解説します。これ1本読めば、造船関係の記事が一気に理解しやすくなります。
※本記事は2026年5月時点の業界一般的な情報をもとにした個人の整理です。専門的な定義は変動・改訂される可能性があるため、厳密な定義は専門書・公式ガイドラインをご参照ください。
📖 この記事の目次(クリックでジャンプ)
- ① 船種に関する用語(バルカー・タンカー・LNG船など)
- ② 船舶サイズ・トン数の用語(DWT・GT・パナマックスほか)
- ③ 造船工程の用語(起工・進水・艤装・引き渡し)
- ④ 造船所の設備・建造方式(ドック・ブロック工法)
- ⑤ 業界・市場用語(受注残・船価・用船など)
- ⑥ 注目キーワード(脱炭素・新燃料船・自動運航)
- まとめ:これだけ覚えれば業界記事が読めるようになる
① 船種に関する用語(バルカー・タンカー・LNG船など)
まずは「どんな船があるのか」という基本から。船種は運ぶものによって設計が大きく異なるため、造船所も得意分野が分かれます。
- バルクキャリア(バルカー):鉄鉱石・石炭・穀物などのバラ積み貨物を運ぶ船。今治造船・新来島どっく・常石造船などが得意
- コンテナ船:規格コンテナを大量に運ぶ船。世界最大級は2万TEU超。LNG二元燃料化が進行中
- タンカー:原油・石油製品を運ぶ船。VLCC(超大型タンカー)が代表格
- ケミカルタンカー:化学薬品を運ぶ特殊タンカー。ステンレス製タンクが特徴。福岡造船が世界トップ級
- LNG船:液化天然ガス(−162℃)を運ぶ高度な技術船。三菱造船・川崎重工などが強い
- LPG船:液化石油ガスを運ぶ船。VLGC(超大型LPG船)も存在
- PCC(自動車運搬船):Pure Car Carrier。新車を5,000〜8,000台積載。新来島豊橋造船が世界トップ級
- フェリー:旅客+自動車を運ぶ船。内海造船が日本トップクラス
- RO-RO船(ロールオン・ロールオフ船):トラック・トレーラーが自走して積載できる船
- クルーズ客船:豪華客船。日本では三菱重工長崎などが建造実績
- 艦艇:護衛艦・潜水艦などの軍艦。三菱重工・JMU・川崎重工が建造
- LCO2船(液化CO2輸送船):CCS(CO2貯留)向けの新ジャンル。脱炭素時代の注目株
② 船舶サイズ・トン数の用語(DWT・GT・パナマックスほか)
船のサイズを表す用語は何種類もあって混乱しがちです。最低限DWT・GTの2つを押さえれば、業界記事はほぼ読めます。
- DWT(載貨重量トン):その船が積める「貨物の重量」。商業的な実力を表す指標。バルカーやタンカーで頻出
- GT(総トン数):船全体の「容積」を表す。法的・登録上の基準として使われる
- NT(純トン数):GTから機関室など貨物に使えない部分を除いた、貨物搭載スペースの容積
- 排水量:船が押しのける水の重量。軍艦で主に使われる
- TEU:20フィートコンテナ換算の積載個数。コンテナ船の能力を表す
- CGT(補正総トン数):船種ごとの建造工数を考慮した補正値。造船所の建造能力比較に使われる
- ハンディサイズ:20,000〜40,000DWT。小回りの効くサイズ。函館どっくの主力
- ハンディマックス/スプラマックス:40,000〜60,000DWT
- パナマックス:60,000〜80,000DWT。旧パナマ運河を通れる最大サイズが語源
- カムサーマックス:80,000〜100,000DWT。新パナマックスとも
- ケープサイズ:100,000DWT超。喜望峰経由でしか航行できない巨大船
- VLCC:Very Large Crude Carrier=20万〜30万DWT級の超大型タンカー
- ULCC:Ultra Large Crude Carrier=30万DWT超の超々大型タンカー
③ 造船工程の用語(起工・進水・艤装・引き渡し)
1隻の船が完成するまで、造船所では2〜3年かけて多くの工程が踏まれます。それぞれの節目に独自の用語があります。
| 工程 | 内容 |
| ① 設計(基本設計+詳細設計) | 船型・構造・配管・電装などを図面化。CADや船舶専用ソフトを使用 |
| ② 鋼板加工・ブロック組立 | 鋼板を切断・曲げ加工してブロックに組み上げる |
| ③ 起工(キール・レイイング) | 船の中心となる竜骨(キール)を据え、建造開始を宣言する儀式 |
| ④ ブロック搭載 | 船台またはドックでブロックを順次組み合わせていく |
| ⑤ 進水(しんすい) | 建造中の船体を初めて水上に浮かべる工程。式典が行われ、船名命名も同時に |
| ⑥ 艤装(ぎそう) | 進水後、エンジン・電気・配管・内装などを装備していく工程 |
| ⑦ 海上試運転(シートライアル) | 実際に海に出して、速力・燃費・操縦性などを試験 |
| ⑧ 引き渡し(デリバリー) | 船主に引き渡して所有権が移る瞬間。造船所にとって完結のタイミング |
進水式の伝統
進水式では船体に固定したシャンパンボトルを叩き割るなどの伝統的な儀式が行われます。船主のVIPが「命名」「支綱切断」を行い、船体が水しぶきを上げて進水する瞬間は、造船所にとって2〜3年の集大成。関係者は感極まるシーンが多いと言います。
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④ 造船所の設備・建造方式(ドック・ブロック工法)
- ドライドック:水を抜いて船を建造する乾式の船渠(せんきょ)。完成後に水を入れて進水
- 船台(せんだい):傾斜した造船用設備。完成後に船体を滑らせて進水させる
- 艤装岸壁:進水後に艤装作業を行う岸壁
- ゴライアスクレーン:800〜1,200トンを吊り上げる門型巨大クレーン。造船所のシンボル
- ブロック工法:船体を数十〜数百のブロックに分けて並行建造し、ドック内で組み合わせる現代造船の基本方式
- メガブロック工法:従来より大型のブロックを陸上で組み、ドック内での搭載作業を効率化
- 艦橋(ブリッジ):船を操縦する司令室
- 機関室:主機(メインエンジン)や発電機が設置される心臓部
ブロック工法の革新
かつては船台上で1から組み立てていた船を、現代では「並行作業で工期短縮」するブロック工法が主流。これにより建造期間が劇的に短縮され、造船所の生産性が向上しました。日本の造船所はブロック工法の精度・効率で世界トップクラスと言われています。
⑤ 業界・市場用語(受注残・船価・用船など)
造船銘柄を分析する投資家や、業界決算記事を読む方には特に重要な用語群です。
- 受注残(オーダーブック):受注済みでまだ建造していない船の総量。造船所の「将来の稼ぎ」を表す最重要指標。「受注残3.5年分」のような表現で使われる
- 船価(船舶価格):1隻あたりの建造価格。バルカーで30〜50百万ドル、LNG船で200百万ドル超など船種で大きく変動
- 新造船価指数(クラークソン):世界の船価動向を示す代表的指数
- 船主(オーナー):船を保有する企業や投資家。日本郵船・商船三井・川崎汽船など
- 用船(チャーター):船を貸し借りすること。船主が運航会社に貸し出す
- 用船料:用船の対価。市況に応じて変動。BDI(バルチック海運指数)等で動向を確認
- 海運市況:海運業の景況感。船価・用船料・運賃に影響
- サブコン(協力会社):造船所に常駐して作業を請け負う協力会社。多くの造船所で社員より多い場合も
- 船級協会:船舶の安全基準を審査する機関。日本海事協会(NK)・ロイド船級協会などが代表
- IMO(国際海事機関):国連の専門機関。GHG規制や安全規則を策定
「受注残3.5年分」の意味
「受注残3.5年分」と聞けば、「今後3.5年は仕事の心配がない」ということ。逆に「受注残1年分」だと「来年以降が不安」となります。日本の主要造船所は2024〜2025年時点で受注残が3〜4年分積み上がっており、業界全体に堅調な追い風です。
⑥ 注目キーワード(脱炭素・新燃料船・自動運航)
2025年以降の造船業界で最もホットなテーマを集めました。投資家・就活生・業界関係者は必ず押さえておきたいキーワードです。
- GHG削減(温室効果ガス削減):IMO目標で2050年までに国際海運のGHGネットゼロを目指す
- ゼロエミッション船:運航時にCO2を排出しない船。アンモニア・水素燃料船などが該当
- 新燃料船:従来の重油に代わる燃料を使う船の総称(LNG・メタノール・アンモニア・水素など)
- LNG二元燃料船(LNG-DF):LNGと従来燃料の両方を使えるエンジンを持つ船。現状の主流
- メタノール燃料船:メタノールを燃料とする船。コンテナ船で増加中
- アンモニア燃料船:アンモニアを燃料とする次世代船。CO2排出ゼロ
- 水素燃料船:水素を燃料とする最先端船。技術的には最も難易度高
- EEXI/CII:既存船・運航船のCO2排出効率を測る規制指標
- カーボンプライシング:CO2排出に価格をつける制度。EUでは2024年から海運業も対象に
- 造船業再生ロードマップ:2025年12月発表の政府の造船産業政策。建造量2倍、官民1兆円投資
- GX補助金:脱炭素に向けたGreen Transformation補助金。新燃料船や設備投資が対象
- ゼロエミッション船等建造促進事業:具体的な補助金制度。採択16社で進行中
- SII補助金:省エネ補助金。電炉転換などに活用
- GIファンド:グリーンイノベーション基金。次世代船開発を支援
- スマートファクトリー:造船所のデジタル化・自動化。今治造船・JMUなどが推進
- 自動運航船(MASS):無人または半自動で運航する船。Maritime Autonomous Surface Shipの略
- 船舶IoT:船の各種データをリアルタイムで収集し、運航最適化に活用
- 3D設計・デジタルツイン:船の建造・運航をデジタル空間で再現する技術
- 今治造船JMU子会社化:2026年1月正式始動。日本造船業界の歴史的再編
- もがみ型護衛艦:三菱重工が建造・豪州への輸出も決定(戦後初の艦艇輸出)
- 日米造船協力:米国の造船業再生に日本が技術協力する枠組み
- FFM(多用途フリゲート):もがみ型の輸出版モデル
まとめ:これだけ覚えれば業界記事が読めるようになる
- 船種は「運ぶもの」で分類される──バルカー・タンカー・コンテナ船・LNG船・PCC等。造船所ごとに得意分野がある。
- サイズ単位は最低限DWTとGTを押さえる──DWT=積める貨物の重さ、GT=船全体の容積。VLCC・パナマックスなどの通称も理解しておきたい。
- 造船工程は起工→進水→艤装→引き渡しの流れ──2〜3年かかる長期プロジェクト。進水式は造船所にとっての集大成。
- 業界記事を読むなら受注残・船価・用船料を意識──「受注残3.5年分」など、造船所の将来性を表す指標。
- 注目キーワードは脱炭素・新燃料船・国策化──LNG二元燃料・メタノール・アンモニア・造船業再生ロードマップが2026年の3本柱。


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