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造船・舶用に関わる人の必修ニュース 2026年8月第2週|中国受注残トップが恒力造船に交代・韓国2強の受注爆発・川重24%増益──これだけ押さえれば情報通

造船トピックス
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今週(2026年8月10日〜14日)の造船・舶用業界は、「中国・韓国の上半期成績発表ウィーク」でした。中国の造船所別受注残ランキングで新興民営の恒力造船が国営大手を抜いて首位に立ち、韓国HD現代グループの上期受注は前年比90%増。国内では川崎重工業の船舶部門が増益を確保し、7月の受発注リストからは「商談は2030年代へ」という新常識も見えてきました。今週の要点だけをサクッと押さえたい方は、この記事1本でOKです

各トピックは「何が起きたか」→「なぜ重要か」の順で、業界初心者の方にも分かるように解説します。

※本記事は2026年8月17日時点の公開情報(日本海事新聞 電子版の2026年8月10日〜14日付各記事ほか)に基づき作成しています。なお8月11日(火・山の日)は祝日のため業界紙は休刊でした。

📖 この記事の目次(クリックでジャンプ)

1. 中国の受注残首位が交代──新興・恒力造船が85%増で国営大手を抜く

【何が起きた?】英クラークソンズ・リサーチの集計で、中国の主要造船所の7月時点の新造船受注残は、新興民営ヤードの恒力造船(大連)が昨年末比85%増の1,177万CGTに急拡大。中国内シェア9%を占め、昨年末首位だった国営大手の滬東中華造船(シェア7%)を抜いてトップに立ちました。中国全体の受注残も昨年末比30%増の1億3,587万CGT・5,172隻に膨らんでいます(日本海事新聞8月14日付)。

【なぜ重要?】恒力造船は、経営破綻した韓国系STX大連の資産を2022年に買収して再生した「まだ若い」造船所です。VLCC(大型原油タンカー)を複数隻同時に建造できる新ドック2基と自動化工場を稼働させ、今春には地元政府と共同で船主会社まで設立し、造っておいた船を転売する「ストックボート」戦略で受注を荒稼ぎ。タンカーの受注残は昨年末比2.9倍です。国営大手の船台がCOSCOグループの大量発注で埋まった間隙を、民営新興勢が突く構図で、世界の造船キャパシティは「中国の新顔」によってまだ増え続けている──日本の造船会社が慎重に受注を選ぶ間に、競争地図は塗り替わりつつあります。なお日系の中国合弁ヤード(川重系DACKS150万CGT・NACKS130万CGT、揚子三井110万CGT、常石舟山70万CGT)も受注残を確保しています(同紙)。

2. 韓国2強の上期──HD現代は受注90%増、ハンファは営業益87%増

【何が起きた?】韓国造船最大手HD現代グループの1〜6月の船舶関連受注高は167億ドル(約2兆6,300億円)と前年同期比90%増。グループ6月末の受注残は520隻に達します。決算も好調で、HD韓国造船海洋の上期は売上高20%増・営業利益66%増でした。ハンファオーシャンも上期受注44億ドル(約7,000億円)・受注残338億ドル(153隻)を確保し、上期の営業利益は87%増と急拡大しています(日本海事新聞8月12日・13日付)。

【なぜ重要?】受注の中身を見ると、HD現代はプロダクト船・コンテナ船・LPG船・LNG船と全方位で108隻を成約、ハンファはタンカー・ガス船中心と、2強で戦略の違いはあれど「量も利益も」取りにいく姿勢は共通です。日本勢が高船価でも採算重視の選別受注を続ける中(内海造船の1Q決算では新規受注ゼロ)、「攻めの韓国、選ぶ日本、増える中国」という三者三様が、今週の数字にくっきり出ました。

3. 揚子江船業の受注は前年の3倍超──38隻・17.5億ドル

【何が起きた?】中国民営造船大手の揚子江船業グループの1〜6月受注高は17億5,000万ドル(約2,782億円)・38隻と、前年同期(5億4,000万ドル・14隻)を大きく上回りました。7月にはタンカー4隻を追加し年初来42隻。6月末の受注残は224億ドル・256隻で、コンテナ船が151隻を占めます。常石造船・三井物産系との合弁YAMIC(江蘇揚子三井造船)の受注残も55隻・31億ドルです(日本海事新聞8月13日付)。

【なぜ重要?】目立つのは1,100〜5,900TEU型といった中小型コンテナ船(フィーダー船)の積み上げです。大型船の発注一巡後、船主の関心が中小型の代替に移っていることを示す動きで、この分野は日本の造船所も得意とするところ。競合の受注動向は、国内勢の来期以降の商談環境を占う材料になります。

4. 川崎重工の船舶部門は24%増益──受注残はVLGC10隻と潜水艦

【何が起きた?】川崎重工業が7日発表した4〜6月期決算で、船舶海洋事業を含むエネルギーソリューション&マリン(ES&M)部門の事業利益は前年同期比24%増の120億円。子会社株式の売却益などが寄与しました。期間中の新造船受注はゼロで、6月末の船舶海洋の受注残は1,904億円(前年比5%減)・13隻──内訳はVLGC(大型LPG船)10隻・潜水艦2隻・ジェットフォイル1隻です。通期のES&M受注高予想はプラント案件の期ずれで6,500億円→5,000億円に下方修正されました(日本海事新聞8月10日付)。

【なぜ重要?】川重の商船建造は坂出のVLGCシリーズに絞り込まれており、受注残13隻のうち10隻がVLGC、2隻が潜水艦という構成は、「ガス船×防衛」に特化した日本的な生き残り方の見本です。会社の通期前提レートは1ドル=150円に据え置かれており、足元の円相場(159円前後)はなお前提より円安側。今週の造船決算では舶用エンジンの赤阪鉄工所も4〜6月期経常62%減と明暗が出ています(→短信)。国内大手の決算比較は名村造船所J-ENG内海造船の各決算まとめをどうぞ。

5. 7月の受発注リスト──商談は「2030年代納期」が当たり前に

【何が起きた?】日本海事新聞集計の7月の新造船受発注リスト(8月12日付)によると、主要造船会社の商談の中心は2030年以降の納期に移行。それでも受発注は止まらず、中国では中遠海運発展がバルカー計39隻(8万7,000重量トン型20隻+21万重量トン型19隻)を中国6社に一括発注するなど、ロット成約が相次ぎました。台湾の陽明海運はハンファに1万3,000TEU型LNG2元燃料コンテナ船6隻を発注。日本勢の上期輸出船契約は500万総トンとほぼ前年並み(0.3%減)でした。

【なぜ重要?】興味深いのは受注を後押しした制度要因です。IMOのNOxテクニカルコード改正で、旧ルールのエンジンを積める「2029年末〜30年初納期」の船に駆け込み需要が発生し、日本の造船所はこの枠を今年春ごろまでに売り切ったとみられます。手持ち工事約3.6年分の日本勢にとって、次の商談はいよいよ2030年代──「いま受ける船が、次の10年の工場を決める」という長期戦に入っています。

6. 今週の短信──JMUが熊本地震に義援金、今治など46市区町村が国に要望ほか

  • JMU、熊本地震へ義援金1,000万円──ジャパンマリンユナイテッドは7日、熊本地震の被災者支援・復興のため熊本県に1,000万円を寄付したと発表(日本海事新聞8月12日付)
  • 「海事産業の未来を共創する全国市区町村長の会」が国交省に要望──今治市など46自治体の会が7日、酒井国交副大臣に競争環境の整備と人材確保・育成支援を要望。設備投資支援の対象拡大や外国人材の定着支援などを求めた(同8月10日付)
  • 赤阪鉄工所の4〜6月期は経常62%減の6,400万円──原材料高で製造費用が増加。一方で内燃機関関連の受注残は66%増の78億円と仕事量は積み上がる。メタノールエンジン開発の助成金も営業外収益に計上(同8月13日付)
  • 川重系DACKSで82型バルカー竣工──川重とCOSCO合弁の大連中遠海運川崎で8万2,000重量トン型バルカー「ARISTOS II」が竣工(同8月13日付)

7. 今回の用語解説──ニュースを読み解くキーワード

📘 CGT(標準貨物船換算トン数)
船の建造の手間を考慮して換算したトン数。単純な重量トンだと大きなタンカーばかりが過大評価されるため、造船所の「仕事量」を比べるときの世界標準のものさしとして使われます。

📘 ストックボート
特定の買い手が決まる前に、造船所が見込みで建造(発注)しておく船のこと。市況が上がれば高値で転売できる反面、下がれば在庫リスクを抱える「攻め」の戦略です。恒力造船は船主会社を自前で持つことでこれを組織的に展開しています。

📘 NOxテクニカルコード
船のエンジンから出る窒素酸化物(NOx)の測定・確認ルール。IMO(国際海事機関)の改正で確認方法が厳しくなるため、「旧ルールで作れるうちに発注したい」という駆け込みが2029年末〜30年初納期の船に集中しました。

📘 VLGC
Very Large Gas Carrier=大型LPG(液化石油ガス)運搬船。川崎重工の商船建造の主力船型です。

8. まとめ──今週の造船・舶用を一言で

  1. 中国の受注残トップが恒力造船に交代──新興民営が85%増の1,177万CGT。中国全体でも30%増と、世界の建造能力はなお拡大中
  2. 韓国2強は受注も利益も爆発──HD現代の上期受注90%増・167億ドル、ハンファは営業益87%増。「攻めの韓国」が鮮明に
  3. 川重の船舶部門は24%増益──受注残はVLGC10隻+潜水艦2隻。「ガス船×防衛」特化の日本型モデル
  4. 商談は2030年代納期へ──NOx改正の駆け込み枠は売り切れ。次の受注が次の10年を決める長期戦に
  5. 熊本地震に業界も対応──JMUが義援金1,000万円。地域と海事産業の結び付きを再確認する一週間
💡 もっと深く知りたい方へ

造船業界の全体像や転職・投資の視点は、当ブログの2大まとめ記事からどうぞ。

造船業界の将来性は?【2026年最新版】──手持ち工事3.6年分の好況はいつまで続くかを徹底解説
造船関連株 完全ガイド──今週登場した名村・内海・J-ENGなど上場各社の見方はこちら
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今週の決算関連は個別まとめもあります:名村造船所(経常77%増)内海造船(経常3.2倍)J-ENG(修理・部品が主役交代)円高と造船の深読み解説

本記事の出典:日本海事新聞 電子版「中国造船所の受注残、恒力が急拡大」(2026年8月14日付1面)、「HD現代G、1―6月船舶関連受注90%増」「【熊本地震】JMU、義援金1000万円」「【新造船受発注リスト】2026年7月」(8月12日付2・5面)、「ハンファ、1―6月受注44億ドル」「揚子江船業、1―6月受注高17.5億ドル」「赤阪鉄工所、経常益62%減」「【竣工】DACKS、82型バルカー」(8月13日付2・4面)、「川重ES&M部門4―6月期、事業利益24%増」「全国市区町村長の会、海事産業支援 改めて要望」(8月10日付2面)。円換算・比率の一部は記事記載の値です。

⚠️ 注意点

本記事は公開情報をもとに整理した情報提供コンテンツであり、特定銘柄への投資勧誘を目的としたものではありません。記載の数値・状況は各記事の公表時点のものです。最新かつ正確な情報は必ず一次情報(各社発表・業界紙原文)をご確認ください。記載内容に基づいて被ったいかなるトラブル・損失についても、情報提供者は一切の責任を負いません。

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