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造船・舶用に関わる人の必修ニュース 2026年9月第3週|新来島960億円投資・世界最大の水素運搬船・自衛隊輸送艇「あかね」進水

造船トピックス
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今週(2026年9月14日〜18日)の造船・舶用業界は、「次世代の船と造り方が同時に見えた週」でした。造船業再生基金の認定を受けた新来島どっくグループは投資総額約960億円の中身を公表。川崎重工の坂出工場では世界最大の液化水素運搬船の建造が動き出し、液化CO2船では日の丸連合の「標準設計」が初の成果を出しました。自衛隊の新部隊向け輸送艇の進水、日米AI造船協議と、防衛・国際連携も前進。今週の要点だけをサクッと押さえたい方は、この記事1本でOKです

各トピックは「何が起きたか」→「なぜ重要か」の順で、業界初心者の方にも分かるように解説します。

※本記事は日本海事新聞 電子版の2026年9月16日〜18日付および9月24日付(連休前の先行配信分)各記事ほか、公開情報に基づき作成しています。数値は各記事の公表時点のものです。

📖 この記事の目次(クリックでジャンプ)

1. 新来島どっくグループ、約960億円投資──基金認定320億円の「中身」が判明

【何が起きた?】新来島どっくは9月17日、造船業再生基金(10年間で3,500億円)に関連して、9月11日付で国土交通相の認定を受けたと正式発表しました。グループの新来島豊橋造船・新来島高知重工・新来島サノヤス造船との共同申請で、グループの投資額は約960億円、うち基金による最大助成額は約320億円。具体的には、新来島どっくが大西工場(愛媛県今治市)で建造ドックの拡張と組立工場・塗装工場の増設、豊橋・高知の2社が組立工場・塗装工場の増設、サノヤスが加工・小組立工場の増設を進めます。すでに認定済みのGX経済移行債(ゼロエミッション船などの建造促進事業)による設備投資も含めると、2034年までにグループ全体で約1,315億円を投資する計画です(日本海事新聞9月18日付2面)。各社の投資メニューはこちら。

会社投資の中身
新来島どっく大西工場(愛媛県今治市)で建造ドックの拡張、組立工場・塗装工場の増設
新来島豊橋造船組立工場・塗装工場の増設
新来島高知重工組立工場・塗装工場の増設
新来島サノヤス造船加工・小組立工場の増設

【なぜ重要?】先週お伝えした基金認定8件は「最大助成額」だけの発表でしたが、今回初めて助成の裏にある投資総額が見えました。新来島の場合、助成320億円に対して投資は960億円──基金がカバーするのは約3分の1で、残りは自己資金という構図です(当ブログ計算)。認定8件の総額9,000億円規模という官民投資の「民」の部分が、各社でこれから続々と具体化していくはず。ドック拡張と塗装工場増設という中身は、建造能力2倍計画の定石どおりの「ボトルネック潰し」です。

2. 世界最大の液化水素運搬船が坂出で始動──神戸製鋼が圧縮機を供給

【何が起きた?】川崎重工業と神戸製鋼所は9月15日、川重が建造する世界最大の4万立方メートル型液化水素運搬船向けに、神鋼が燃料ガス供給用の油冷式スクリュー圧縮機を供給する契約を結んだと発表しました。同船は水素と油を燃料にできる2元燃料発電機エンジンを積んだ電気推進船で、液化水素タンクから自然に発生するボイルオフガス(BOG)を神鋼の圧縮機で昇圧し、発電用燃料として有効利用します。船は川重の坂出工場(香川県)で建造し、造船契約は今年1月に締結済み。事業主体の日本水素エネルギー(JSE)がNEDOグリーンイノベーション基金事業として、2030年度までに基地と船の間の荷役実証や外洋条件での実証試験を行う計画です。主要目は全長約250メートル・幅35メートル・深さ20メートル・喫水8.5メートル・航海速力約18ノット(日本海事新聞9月16日付2面)。

【なぜ重要?】実証船「すいそ ふろんてぃあ」の約30倍という4万立方メートル型は、水素を「運べる商品」に変えるための本命サイズです。川崎重工の銘柄ガイドで解説したとおり、同社は7月の大型資金調達の使途に坂出工場の次世代エネルギー運搬船の建造体制強化と水素サプライチェーンを掲げており、その中核プロジェクトがいよいよ実船で動き出した格好。そして注目は神戸製鋼の名前が「舶用機器サプライヤー」として登場したことです。鉄鋼メーカーの機械事業が水素船の心臓部を担う──造船×鉄鋼×水素という当ブログど真ん中のクロスオーバーです。

3. 液化CO2船の「標準設計」が初の成果──MILES6社がNKからAiP取得

【何が起きた?】川崎汽船・商船三井・日本郵船の邦船3社、日本シップヤード(NSY)、三菱造船と、各社が出資する共同設計販売会社MILESは9月15日、低圧仕様の液化CO2(LCO2)輸送船について日本海事協会(NK)から基本設計承認(AiP)を取得したと発表しました。対象は標準化を進める低圧仕様4万2,000立方メートル型。邦船3社が持つ低温液化ガス輸送の運航知見を掛け合わせてリスク評価(HAZID)を行い、安全設計方針を策定しました。6社は2025年に標準設計スキームの覚書を結んでおり、今回がスキームを通じた初の具体的成果。タイ・バンコクの「ガステック2026」で授与式が行われました。MILESは2025年に三菱造船と今治造船の合弁会社が社名変更して誕生し、その後邦船3社が出資に加わった経緯を持つ、「オールジャパン標準船」のための会社です(日本海事新聞9月16日付1面)。

【なぜ重要?】国内で順次始まるCCS(CO2回収・貯留)プロジェクトでは、回収したCO2を貯留地へ運ぶLCO2輸送船がまとまった数、必要になる見込みです。カギは「標準設計」──1隻ごとの一品設計をやめて設計を共通化すれば、設計・建造の省力化で建造能力の強化に直結します。船社の運航知見と造船側の設計力を1つの会社(MILES)に束ねるこのやり方は、人手不足の日本が数で勝負するための現実解。「新しい船種×標準化」は建造能力2倍計画のもう一つのエンジンと言えます。

4. 自衛隊海上輸送群の輸送艇「あかね」進水──JMUが1番艇

【何が起きた?】ジャパンマリンユナイテッド(JMU)は9月17日、横浜事業所鶴見工場で自衛隊海上輸送群向け輸送艇(MSV)1番艇の命名・進水式を開催しました。艇名は太陽にちなんで「あかね」と命名され、若林洋平防衛政務官が命名書を読み上げました。基準排水量150トン・全長約35メートルで、ウオータージェット推進3基により速力約18ノット。戦車などを砂浜に直接揚陸でき、鹿児島県・奄美大島の第3海上輸送隊に配備されます。海上輸送群は、港湾が整備されていない南西諸島などの島しょ部輸送を強化するため陸海空共同の部隊として新設された組織で、輸送艦には陸上自衛官がメインで乗り組むという異例の運用。2027年度までにMSV4隻、「ようこう」型輸送艦(LSV)2隻、「にほんばれ」型輸送艦(LCU)4隻の計10隻を導入する計画です(日本海事新聞9月18日付2面)。

【なぜ重要?】「港のない島に、船で直接届ける」――先々週の無人揚陸艇の深読みで扱った能力が、有人・自衛隊バージョンで実物になりました。計10隻のうちLSV・LCUは内海造船が受注・建造してきた船で、今回のMSVはJMU。島しょ防衛の輸送需要が、複数の造船所に安定した仕事を生み始めています。JMUが「輸送艇で得た技術・経験を基に高付加価値の艦艇建造を続ける」と表明している点も、商船と防衛の二本柱化を示す動きです。

5. 日米の造船連携が一気に前進──AI造船ロボット協議とミシガン大MOU

【何が起きた?】今週は日米の造船連携ニュースが2本重なりました。①国土交通省海事局は9月18日、日米の造船関係者・学識者が9月8〜11日に米ミシガン州アナーバーでAI造船技術の研究開発協議を実施したと発表。船体を模した大型構造物を使うロボットの開発・検証、ミシガン大での高精度センサー共同開発、実在する日米の造船所をバーチャル空間に再現してロボットを稼働させるシミュレーション実証などの計画を確認しました(9月24日付1面)。②日本郵船グループの技術研究会社MTIは9月16日、米ミシガン大学と今後5年間の共同研究・研究者交流のMOUを締結。デトロイトなどで開かれた日米造船サミット「Deployment to Action」に合わせた動きで、MTIの安藤英幸常務は「造船分野におけるロボティクス、自動化、AIに関する日米双方の知見を結集することで、共同で取り組むことによる最大のインパクトを見極めることができる」とコメントしています(9月17日付1面)。

【なぜ重要?】昨年10月の日米造船協力覚書が、「官の協議」と「産学のMOU」という二層で同時に動き出した週です。米国の造船再生を巡っては、韓国HD現代が米造船所の近代化支援で先行するなど日韓の主導権争いが進んでいますが(先週の必修ニュース参照)、日本は「AI×ロボット×人材」という技術の切り口で食い込む構え。尾道造船と米ブルワークの無人艇提携のような民間の動きも含め、民・官・学の3ルートが揃ったのが今週の到達点です。

6. 今週の短信──世界初のアンモニア燃料STS供給、人材調査ほか

  • 日本郵船など、世界初のアンモニア燃料の船舶間(STS)供給に成功──JMU有明で建造中のアンモニア燃料アンモニア輸送船(AFMGC・11月竣工予定)の海上試運転に向け、国華産業のアンモニア輸送船から直接燃料を供給(9月18日発表・24日付1面)
  • いよぎん地域経済研究センター、造船業再生ロードマップの調査結果を公表──瀬戸内の造船・舶用40社の回答で、90%が「人材の確保・育成」を経営課題に挙げ、期待する支援施策も人材が最多(70%)、人材確保に必要な施策は「賃金・待遇の改善」が87.5%でトップ。建造能力2倍計画の最大のボトルネックを裏付けるデータ(9月15日発表・17日付)
  • NK、韓国HD現代グループと共同開発2件のMOU──IGCコード改正対応のLNG運搬船設計と、自動運航ソリューション搭載船の検討(ガステック2026で締結・24日付)
  • バルチラジャパン、「遠隔支援事業場」の第1号認定を取得──舶用エンジンの遠隔サポートで国交省の認定制度初適用(9月17日発表・18日付)
  • 常石グループ、構想「常石をつくる」始動──工場CI導入など働く環境を長期更新(9月17日発表・24日付)
  • 商船三井クルーズ「MITSUI OCEAN SAKURA」就航へ──命名式典を横浜港で開催、同型2隻体制に(9月16日・17日付1面)
  • 三井E&S、船舶の高精度「推力計測システム」開発──実海域実証で有効性を確認(9月16日発表・17日付)

7. 今回の用語解説

■ AiP(基本設計承認)
Approval in Principleの略。船級協会が新しい船のコンセプト設計を審査し、「安全規則に照らして基本的に成立している」とお墨付きを与える制度です。実際の建造契約の前段階で技術の確からしさを示せるため、新燃料船や新船種の開発では重要なマイルストーンになります。

■ STS供給(船舶間燃料供給)
Ship to Shipの略で、燃料供給船(バンカリング船)と受け取る船をホースでつないで、海上で直接燃料を渡す方法。岸壁の設備に頼らず給油(給燃料)できるため、新燃料の普及にはSTSの安全なオペレーション確立が欠かせません。毒性のあるアンモニアでの成功は世界初です。

■ 自衛隊海上輸送群
南西諸島など港湾が整備されていない島しょ部への輸送機能を強化するため、陸・海・空共同の部隊として新設された組織。配備される輸送艦・輸送艇は陸上自衛官が中心となって操船・運用するのが特徴で、2027年度までに計10隻の導入が計画されています。

8. まとめ

  1. 新来島グループが約960億円投資を公表──基金助成320億円は投資の約3分の1。GX分含め34年までに計約1,315億円
  2. 世界最大の4万m³液化水素運搬船が坂出で始動──神戸製鋼が圧縮機供給。造船×鉄鋼×水素のクロスオーバー
  3. LCO2船の標準設計が初のAiP──邦船3社×造船連合のMILESスキームが機能。CCS時代の新船種へ
  4. 自衛隊海上輸送群の1番艇「あかね」進水──島しょ輸送の防衛需要がJMU・内海など複数造船所の仕事に
  5. 日米造船連携が官・産学の二層で前進──AIロボット協議とミシガン大MOU。民間の無人艇提携と合わせ3ルートに
💡 ぞうせんおじさんの一言

水素船・CO2船・AI造船と「未来の仕事」が次々に実物になり、現場の調査では90%が人材確保を課題に挙げる──つまり、いま造船業界は圧倒的な売り手市場に向かっています。

造船・重工業界の求人を探すなら、業界に強い転職エージェントで情報収集から始めるのがおすすめです。

本記事の出典:日本海事新聞 電子版(新来島どっくグループの投資〔9月18日付2面〕、川重・神鋼の液化水素運搬船圧縮機〔9月16日付2面〕、MILESのLCO2船AiP〔9月16日付1面〕、JMUのMSV「あかね」進水〔9月18日付2面〕、日米AI造船協議〔9月24日付1面〕、MTI・ミシガン大MOU〔9月17日付1面〕、アンモニア燃料STS供給〔9月24日付1面〕、いよぎん地域経済研調査〔9月17日付〕ほか。9月24日付は連休前の先行配信分)。数値は各記事の公表時点のものです。

⚠️ 注意点

本記事は公開情報に基づく業界ニュースの解説であり、特定企業への投資勧誘を目的としたものではありません。「なぜ重要?」の解説には筆者の見立てを含みます。最新かつ正確な情報は、各社の公式発表や一次情報を必ずご確認ください。記載内容に基づいて被ったいかなるトラブル・損失についても、情報提供者は一切の責任を負いません。

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