楽天

鉄鋼業界に関わる人の必修ニュース 2026年7月第4週|東京製鉄が4〜6月期経常赤字・特殊鋼は累計2万円値上げ・めっき鋼板4年ぶり高値──これだけ押さえれば情報通

鉄鋼トピックス
本ページはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。

「業界の人と話すとき、話題に困りたくない」「先週何が動いたか、最低限これだけは押さえておきたい」──そんな鉄鋼業界に関わる方のための、週次キャッチアップ記事です。

本記事は2026年7月25日時点の公開情報(日刊産業新聞・日刊鉄鋼新聞の紙面、各社発表)をもとに、今週(7月21日〜24日)のトピックスを凝縮しました。今週は決算シーズンの第1号・東京製鉄が4〜6月期で経常赤字という重いニュースと、特殊鋼・めっき鋼板の「値上げ第2ラウンド」が同時進行。これだけ読めば打ち合わせや雑談で「情報通だね」と言ってもらえる、実用的な内容を目指しています。

※本記事は2026年7月25日時点の公開情報に基づきます。数値・内容は公表時点のものです。

📖 この記事の目次(クリックでジャンプ)

1. 東京製鉄、4〜6月期は経常赤字──決算シーズンは厳しい幕開け

鉄鋼の決算シーズンが始まりました。第1号の東京製鉄が7月17日に発表した2026年4〜6月期決算(非連結)は、売上高729億2,700万円、営業損益が約23億円の赤字、経常損益も17億4,300万円の赤字。4〜6月期の経常赤字は2012年4〜6月期以来です(日刊産業新聞 7月21日付1面)。

前年同期は53億円強の経常黒字だったので、1年で70億円規模の利益が消えた計算です。赤字の主因はスプレッド(製品価格と原料価格の差)の悪化。中東情勢による急速なコスト上昇に対し、製品販売価格への反映が後追いになったためです。鋼材販売数量は73万9,000トン、販売単価は9万6,800円でした。一方で純損益は投資有価証券や高松鉄鋼センター跡地などの資産売却により18億8,200万円の黒字を確保し、通期の純利益予想はトントンから10億円へ上方修正しました(売上高・営業損益・経常損益の見通しは据え置き)。4月時点で公表済みの通期見通し(営業40億円の赤字)は変えていません。

📌 ここはチェック
東京製鉄の決算は「電炉業界の体温計」。販売価格の引き上げ(前回値上げ+8月は据え置きで浸透待ち)がスプレッドをどこまで回復させるかが下期の焦点です。同社の投資判断材料は東京製鐵(5423)銘柄まとめで整理しています。来週は日本製鉄・JFEなど高炉大手の決算が続きます。

2. 値上げ第2ラウンド──特殊鋼は累計2万円、ステンレスも追随

コスト高への対抗策も一斉に動きました。大同特殊鋼と日本高周波鋼業は、特殊鋼棒線(構造用鋼・軸受鋼など)を8月契約分からトン当たり1万円追加値上げ。中東情勢によるエネルギーなどのコスト上昇が背景で、4月の値上げと合わせ累計2万円になります(日刊産業新聞 7月22日付1面)。

ステンレスでも、愛知製鋼が8月契約分からステンレス形鋼・丸棒の値上げを発表(ニッケル系・モリブデン系が対象。同 7月23日付1面)。JFEスチールの鋼管値上げ(先週既報)も含め、「中東発のコスト上昇を、秋までに価格へ織り込む」動きが品種横断で広がっています。東京製鉄が8月販価を据え置いて浸透を待つのも、この大きな流れの一部です。

3. めっき鋼板(GI)市況が5,000円上伸──AD効果で4年ぶり水準

価格是正が「効いた」事例も出ています。東京地区の薄板市況で、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)がトン当たり5,000円上伸。GIの上昇は2022年7月以来、約4年ぶりです。昨年8月に始まった中国・韓国製めっき鋼板へのアンチダンピング(AD)調査開始を受けて輸入材が減り、メーカー値上げを受けた流通の価格転嫁が進み始めました。電気亜鉛めっき鋼板(EG)も2,000円上昇しています(日刊産業新聞 7月24日付1面)。

ニッケル系ステンレス(7月に暫定AD課税発動)に続き、「貿易措置→輸入減→国内市況の正常化」という型が、めっき鋼板でも再現されつつある構図。安値輸入に苦しんできた国内メーカー・流通にとって、政策と市況がかみ合ってきた夏と言えます。

4. 鉄スクラップは続落──東鉄の購入価格引き下げと赤字の裏表

原料側は下げ基調です。日刊産業新聞調べの日本鉄スクラップ3地区平均価格(H2)は500円続落し5万2,700円と、7月8日からの累計下落は1,500円に。4月以来3カ月ぶりの水準となりました。ベトナム向け輸出の鈍さなど軟調な海外相場が国内に波及し、東京製鉄も21日までに全工場でスクラップ購入価格を500円引き下げています(同 7月22日付1面)。

セクション1の東鉄の赤字と合わせて見ると、いまの電炉は「原料は下がるが、電力コストは高く、製品転嫁は道半ば」という難しい局面。スクラップ安は本来コスト面の追い風ですが、それ以上に販価とエネルギーの問題が大きい──決算と市況がセットで読める1週間でした。

5. 日本製鉄、直江津に445mの鋼製遮水壁──能登地震を教訓に

ユニークな設備投資の話題も。日本製鉄は7月22日、東日本製鉄所直江津地区(新潟県上越市)に津波・河川氾濫対策の「浸水対策用鋼製遮水壁」を設置したと発表しました。全長445メートル・壁高2メートル、総工費約3億5,000万円。2024年1月の能登半島地震で直江津海岸線に津波が到達したことを受けて検討を始めたもので、自社グループの鋼矢板「NS-SP25H」やハット形鋼矢板を用いて、工場内部への浸水を抑える構えです(日刊産業新聞 7月23日付1面)。

面白いのは、これが「自社製品で自社工場を守る」実例であること。防災・国土強靱化は鋼材の大きな需要分野であり、直江津の遮水壁は鋼製防災インフラのショーケースにもなります。災害対策と鋼材需要の交差点として、覚えておきたい一件です。

6. 2026年の鉄鋼輸出、26年ぶり「3,000万トン割れ」が濃厚に

構造変化を示す統計も出ました。2026年1〜6月の全鉄鋼輸出量は前年同期比6.9%減の1,406万トン。暦年上期としてはリーマン・ショック直後の2009年に次ぐ低水準で、このままいけば暦年の鉄鋼輸出が26年ぶりに3,000万トンを割り込む公算が大きいと報じられています(日刊鉄鋼新聞 7月23日付1面)。1ドル160円台という歴史的な円安水準にもかかわらず、輸出を伸ばせていないのが今の日本の鉄鋼です。

背景は2つ。各国でAD調査やセーフガードなど通商措置が拡大し包括的な保護主義が強まっていること、そして行き場を失った中国材との競合です。6月単月では前年同月比1.8%増の253万8,000トンと持ち直しましたが(財務省統計・日刊産業新聞 7月23日付)、単月の増減より「年3,000万トン割れ」という地殻変動に注目すべき局面。国内では上期の粗鋼生産も4,040万トンと前年をわずかに下回り(日本鉄鋼連盟 7月22日発表)、年率換算8,300万トン弱の低水準が続いています。輸出でも内需でも量が伸びないからこそ、各社は高付加価値化・電炉転換・価格是正に活路を求めている──今週の値上げラッシュも、この大きな文脈の中にあります。

7. 日鉄スクラップ新規格の詳細判明──「銅0.07%以下=新断相当」

先週お伝えした日本製鉄の「鉄スクラップ調達新規格」に続報です。日刊鉄鋼新聞(7月21日付1面)によると、新規格「指定品」の一次案では銅の含有比率が0.07%以下を「新断」相当、0.15%以下を「HS」相当とみなす案が示されました。規格は上期をめどに確定する予定と報じられ、2029年度下期以降に稼働する八幡・広畑の革新大型電炉(2拠点合計で年産約250万トン規模)に向け、年間数百万トン規模の高品質スクラップを本社一元管理で調達する体制を整えます。今月から一部取引の契約主体を製鉄所から本社へ移す動きも始まったと報じられています。

「銅の少なさで等級が決まる」時代の具体的な数字が初めて見えてきました。なぜこれが業界の構造を変え得るのかは、深読み解説|日鉄「鉄スクラップ新規格」はなぜ銅濃度で分類するのかで詳しく解説しています。

8. その他、今週の小ネタ

  • 住友重機械工業の鋼管成形「STAF工法」が来春から自動車部品で初の量産へ──自動車部品大手エイチワンが三重の亀山製作所に設備を導入。鋼管を加熱してフランジまで一体成形する工法で、部品の軽量化・点数削減につながる新技術です(日刊鉄鋼新聞 7月21日付1面)
  • 奥谷金網製作所が「レーザーパンチング」を開発──パンチングプレスでは不可能だった微細孔加工をレーザーで実現する国内初技術と紙面で紹介。フィルター製品として今秋発売予定です(同 7月21日付1面)
  • 丸一鋼管の新社長に森田渉氏──6月24日付で就任。「エンゲージメント重視」を掲げる新体制インタビューが掲載されました(同 7月22日付1面)
  • 共英製鋼の人財戦略インタビューが掲載──部門間交流制度や研修・教育投資の拡充など、電炉大手の人材確保・育成の取り組みが紹介されました(同 7月24日付1面)

9. 今週の用語解説──ニュースを読み解くキーワード

スプレッドとは

電炉メーカーの収益力を測る基本指標で、製品の販売価格と主原料(鉄スクラップ)価格の差のこと。この差からエネルギー代や人件費などを賄うため、スプレッドが縮むと利益が消えます。東京製鉄の赤字は「スクラップは下がったが、それ以上にコスト増と販価の遅れが効いた」というスプレッド悪化の教科書的な事例です。

溶融亜鉛めっき鋼板(GI)とは

溶かした亜鉛の槽に鋼板をくぐらせて表面をコーティングした、さび に強い鋼板。建材や家電、自動車部品まで幅広く使われます。電気めっきで亜鉛を付けたものはEG(電気亜鉛めっき鋼板)と呼ばれ、用途や膜厚が異なります。輸入材との競合が激しい品種で、今回のAD調査が市況を動かしました。

鋼矢板(こうやいた)とは

互いにかみ合わせて地中に打ち込み、壁をつくるための鋼材。護岸や止水壁、土留めなどに使われる土木の定番製品です。日本製鉄が直江津の遮水壁に使った「ハット形鋼矢板」は断面が帽子(ハット)形で、少ない材料で高い剛性を出せるのが特長とされます。

新断・HS・H2とは(鉄スクラップの等級)

鉄スクラップの代表的な等級区分。「新断」はプレス・加工工場などから出る新しい切れ端で、不純物が少ない上級品。「HS」はそれに準じる厚物の上級等級、「H2」は解体材など一般的な老廃スクラップの代表格で、輸出入札や相場の指標にも使われます。日鉄の新規格は、この伝統的な等級の世界に「銅濃度」という新しいものさしを持ち込むものです。

軸受鋼とは

ベアリング(軸受)に使われる高い硬さと耐久性を持つ特殊鋼。自動車や産業機械の回転部分を支える重要部品の材料で、今回の大同特殊鋼などの値上げ対象にも含まれます。特殊鋼の値動きは、日本の機械産業のコストに直結します。

まとめ──今週の3行サマリ

  • 東京製鉄の4〜6月期は経常赤字──スプレッド悪化が直撃(純利益は資産売却で黒字・通期予想は10億円へ上方修正)。決算シーズンは厳しい幕開け
  • 値上げ第2ラウンドが品種横断で進行──特殊鋼は累計2万円、ステンレス形鋼・丸棒も追随。GI市況は5,000円上伸で4年ぶり水準とAD効果が波及
  • 年間の鉄鋼輸出は26年ぶり3,000万トン割れが濃厚──円安でも通商措置と中国材競合で伸びず。スクラップ続落・日鉄新規格の詳細判明(銅0.07%=新断相当)と、原料の構造変化も進む

👀 来週以降の注目──①日本製鉄・JFE・神戸製鋼など高炉大手の4〜6月期決算(7月末〜8月頭に発表が集中する見込み)、②8月契約での値上げ浸透度(特殊鋼1万円・ステンレス・鋼管)、③鉄スクラップ相場の底入れ時期と関東鉄源の8月輸出入札。

「赤字」と「値上げ」が同じ週に並ぶ──コスト高の痛みと、価格是正への執念が交錯する夏です。これだけ押さえておけば、明日の打ち合わせや業界人との会話で恥をかかずに済むはずです。引き続き毎週このシリーズで「業界人の必修ニュース」をお届けしていきますので、定期チェックにご活用ください。

💰 業界ウォッチを「次の一歩」に──気になる銘柄が出てきたら証券口座おすすめ比較【楽天・DMM・松井】、この業界で働くことに興味が湧いたら就職・転職おすすめサービスをどうぞ。

本記事の出典:日刊産業新聞(2026年7月21日〜24日付紙面:東京製鉄4〜6月期決算〔21日付1面・決算表含む〕/大同特殊鋼・日本高周波の特殊鋼値上げ〔22日付1面〕/鉄スクラップ3地区平均・東鉄購入価格〔22日付1面〕/愛知製鋼ステンレス値上げ・日鉄直江津遮水壁・6月鉄鋼輸出〔23日付1面〕/GI市況5,000円上伸〔24日付1面〕/奥谷金網・丸一鋼管・共英製鋼〔21・22・24日付1面〕)、日刊鉄鋼新聞(7月21日付1面:日鉄スクラップ新規格詳報・住友重機械STAF工法・東京製鉄決算詳報/7月23日付1面:鉄鋼輸出26年ぶり3,000万トン割れ濃厚・上期粗鋼4,040万トン)、東京製鉄の通期見通し(2026年4月開示の営業赤字40億円見通し)は日刊鉄鋼新聞Web・適時開示情報で照合。本記事は執筆時点の公開情報に基づきます。詳細は各公式発表をご確認ください。

⚠️ 注意点
本記事は業界動向の情報整理を目的としたものであり、特定企業への投資や取引を推奨するものではありません。記載の数値は公表時点のものです。

コメント