「業界の人と話すとき、話題に困りたくない」「先週何が動いたか、最低限これだけは押さえておきたい」──そんな鉄鋼業界に関わる方のための、週次キャッチアップ記事です。
本記事は2026年8月1日時点の公開情報(鉄鋼新聞・日刊産業新聞、経済産業省等の公式発表)をもとに、業界人なら最低限押さえておきたい先週(7月27日〜31日)のトピックスを1本に凝縮しました。これだけ読めば打ち合わせや雑談で「情報通だね」と言ってもらえる、実用的な内容を目指しています。
※本記事は2026年8月1日時点の公開情報(鉄鋼新聞・日刊産業新聞・経済産業省・気象庁等)に基づきます。数値は公表時点のものです。
📖 この記事の目次(クリックでジャンプ)
- 1. めっき鋼板のAD調査、「クロ」仮決定──暫定課税は来月にも
- 2. 令和8年熊本地震──南九州唯一の電炉が被害確認中
- 3. 公共工事でGXスチール活用へ──試行工事の第一弾6案件が確定
- 4. 鉄スクラップは3週続落──輸出商談も低迷
- 5. 日本成長戦略会議が始動──橋本・日鉄会長が委員に
- 6. その他、今週の小ネタ
- 7. 今週の用語解説──ニュースを読み解くキーワード
- 8. まとめ──今週の3行サマリ
1. めっき鋼板のAD調査、「クロ」仮決定──暫定課税は来月にも
経済産業省と財務省は7月24日、韓国・中国製の溶融亜鉛めっき鋼帯・鋼板(GI)に対するアンチダンピング(AD=不当廉売)調査で、ダンピングの疑いが濃厚とする「クロ」の仮決定を発表しました(鉄鋼新聞・日刊産業新聞7月27日付1面、経産省発表)。関税・外国為替等審議会の諮問などを経て、早ければ8月にも暫定AD課税が発動される見通しです。
- 不当廉売差額率(ADマージン):韓国製32.49〜42.69%、中国製63.95〜68.67%。個社では韓国・ポスコが32.49%など
- 調査期間は12月12日まで4カ月延長──最終決定に向けて調査を継続
- 経緯:日本製鉄・日鉄鋼板・神戸製鋼所・淀川製鋼所の4社による課税申請を受け、2025年8月に調査開始(日刊産業新聞)
- 日本鉄鋼連盟は同日、広瀬政之会長(JFEスチール社長)のコメントを発表し、政府の決定を評価
先週お伝えした「GI市況が4年ぶりに5,000円上伸」の背景には、この調査開始による安値輸入材の激減がありました。仮決定と暫定課税で流れはさらに固まり、関東地区ではすでにトン5,000円のさらなる上げを目指す動きも報じられています(日刊産業新聞7月27日付)。国内メーカーの薄板事業にとっては、久々のはっきりした追い風です。
2. 令和8年熊本地震──南九州唯一の電炉が被害確認中
7月28日午後4時27分ごろ、熊本県でマグニチュード7.1の地震が発生し、宇城市と八代郡氷川町で最大震度7を観測しました(気象庁)。熊本県での震度7は2016年の熊本地震以来です。被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
鉄鋼業への影響として、震源に近い宇土市に工場を置く大阪製鉄・西日本熊本工場が、従業員の被災状況や設備への影響の確認を進めています(鉄鋼新聞7月30日付1面)。同工場は南九州唯一の電炉工場で、年産30万トン規模、主に鉄筋用鋼材を生産しており、被害の詳細は今後発表される見込みです。一方、玉名郡の九州丸一鋼管は従業員にけがはなく、工場にも大きな被害はなかったとして、すでに通常操業を再開しています(同)。
📌 ここはチェック──南九州の鉄筋供給拠点が止まると、九州の建設向け鋼材需給に影響が出る可能性があります。復旧関連では鋼矢板・鉄筋など建設用鋼材の需要が増える局面も想定されますが、まずは被害の全容と操業再開時期の公式発表を待って判断すべき段階です。
3. 公共工事でGXスチール活用へ──試行工事の第一弾6案件が確定
グリーン鉄(GXスチール)の公共工事での本格活用に向けた試行工事の第一弾として、国土交通省直轄の土木工事6プロジェクトが固まりました(鉄鋼新聞7月31日付1面)。北海道の橋梁工事や岐阜県の排水路整備工事などで、鋼矢板や橋梁用厚板など合わせて2,000トン規模のグリーン鉄が使用される見通しです。2030年度以降の本格活用に向けた地ならしが始まります。
あわせて日本鉄鋼連盟は、鉄鋼製品のCO2排出の扱いを定める業界ガイドライン3本(カーボンフットプリントの製品別算定ガイドライン、「GXスチールガイドライン」への改訂・改称、非化石電力鋼材の算定ガイドライン)を策定しました(日刊産業新聞7月29日付)。「グリーン鉄をどう測り、誰が買うか」のルールと実需の両方が、この1週間で一気に前進した格好です。電炉化投資を進める各社にとって、グリーン鉄の「出口」が公共調達で確保され始めた意味は大きいと言えます。
4. 鉄スクラップは3週続落──輸出商談も低迷
鉄スクラップ相場の軟調が続いています。東京製鉄が関東・中部の拠点でH2買値を500円下げたのをきっかけに周辺の電炉メーカーも追随し、日刊産業新聞調べの日本鉄スクラップ総合価格(東名阪3地区・H2平均)は7月28日に5万2,000円と、直近高値の7月8日から累計2,200円(4.1%)下落。週末31日時点では5万1,500円まで下げ、約3週間下落が続いています(日刊産業新聞)。
下落の背景は輸出の弱さです。主要輸出先であるベトナム・バングラデシュ向けの輸出商談は低迷し、FOB換算で韓国向けを下回る価格水準に沈んでいます。ドル建て価格の下落で、円安でも追い風にならない状況です(鉄鋼新聞7月29日付1面)。国内の需給も緩んでおり、当面は海外市況の反転待ちという展開です。
5. 日本成長戦略会議が始動──橋本・日鉄会長が委員に
高市早苗首相を本部長とする日本成長戦略本部の下に設置された「日本成長戦略会議」(議長・高市首相)に、日本製鉄の橋本英二会長兼CEOが有識者委員として参画しています。鉄鋼新聞は7月30日付から考察連載を開始し、成長戦略の柱となる「戦略17分野」にAI・半導体とともに、鉄鋼業と関わりの深い「造船」が含まれることなどを、橋本氏の発言を交えて伝えています。
産業界のトップが国の成長シナリオづくりに直接関与する構図で、鉄鋼・造船を含む基幹産業への政策支援(GXスチールの公共調達拡大や設備投資支援など)がどこまで具体化するかが今後の注目点です。
6. その他、今週の小ネタ
- 合同製鉄が新中計を始動──美濃部慎次社長がインタビューで「経常益160億円」への再チャレンジを表明。今期は経常益70億円と減益予想からの巻き返しを図る(鉄鋼新聞7月27日付)
- 環境省が「スクラップヤード環境対策技術検討会」の初会合──改正廃棄物処理法の施行に向け、日本鉄リサイクル工業会の木谷謙介会長が委員参加。「適正業者への配慮」を訴え(同7月28日付)
- 三菱商事がDX新会社「ミルボックス」設立──ミルシート電子管理「Mill-Box」と流通在庫管理「M-Stock」事業を8月1日付で移管、11月から営業開始(日刊産業新聞7月31日付)
- メタルワンも鉄スクラップ取引のデジタル化サービス「Metal X GP」を東日本から開始(鉄鋼新聞7月31日付)
- 神戸製鋼所・川崎重工業・JR西日本など9社の「鉄道による水素輸送」実証がNEDOに採択(日刊産業新聞7月31日付)
- 関東の普通鋼電炉14社の7月粗鋼生産は前年同月比4.6%減の見込み(同7月28日付)/コイルセンターの上期出荷は1.3%増の665万6,037トンで2年連続増(同7月29日付)
7. 今週の用語解説──ニュースを読み解くキーワード
AD調査の「仮決定」とは
アンチダンピング(不当廉売)調査の途中段階で、「ダンピングの事実と国内産業への損害が推定できる」と政府が判断すること。これを受けて、最終決定を待たずに暫定的な課税(暫定措置)を発動できます。今回のGIでは韓国製32.49〜42.69%、中国製63.95〜68.67%の差額率が示されました。
GXスチール(グリーン鉄)とは
製造時のCO2排出を大幅に削減した鋼材の呼び方で、削減実績(削減価値)を特定の鋼材に割り当てる「マスバランス方式」などで供給されます。日本鉄鋼連盟が2026年7月に従来の「グリーンスチールに関するガイドライン」を「GXスチールガイドライン」へ改訂・改称し、公共工事の試行6案件で計2,000トン規模の使用が始まる予定です。
ミルシートとは
鋼材の検査証明書のこと。メーカーが発行し、化学成分や機械的性質(強度など)が規格を満たすことを証明する書類で、流通・加工・建設の各段階で受け渡しされます。紙やPDFでのやり取りが多く残る分野のため、三菱商事の「Mill-Box」のような電子管理サービスが相次いで立ち上がっています。
FOBとは
Free on Board(本船渡し)の略で、輸出港で船に積み込むまでの費用を売り手が負担する取引条件。鉄スクラップの輸出価格は「FOBでトン何円」と表され、海上運賃は買い手持ちになります。今週の相場記事では、ベトナム・バングラデシュ向けのFOB価格が韓国向けを下回る「逆転」が話題になりました。
8. まとめ──今週の3行サマリ
- GIのAD調査が「クロ」仮決定──韓国32〜42%・中国63〜68%の差額率。暫定課税は8月にも発動へ。めっき鋼板市況の追い風が確定的に
- 熊本で震度7、南九州唯一の電炉が被害確認中──大阪製鉄西日本熊本工場の状況と九州の鋼材需給への影響を注視
- GXスチールの公共調達が始動──試行工事6案件・2,000トン規模。鉄連のガイドライン整備と合わせ「グリーン鉄の出口」づくりが前進
👀 来週以降の注目──①GIの暫定AD課税の正式発動(関税・外国為替等審議会の手続き)、②大阪製鉄・西日本熊本工場の被害状況と復旧時期の発表、③高炉大手の4〜6月期決算(8月上旬発表集中)。
保護主義の波が「輸出の逆風」だけでなく「国内市況の追い風」としても働くことを、GIの仮決定がはっきり示した1週間でした。これだけ押さえておけば、明日の打ち合わせや業界人との会話で恥をかかずに済むはずです。引き続き毎週このシリーズで「業界人の必修ニュース」をお届けしていきますので、定期チェックにご活用ください。
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本記事の出典:鉄鋼新聞(2026年7月27日付1面・GI仮決定/7月29日付1面・スクラップ輸出商談/7月30日付1面・熊本地震の鉄鋼関連影響/7月31日付1面・GXスチール試行工事、成長戦略考察連載)、日刊産業新聞(7月27日付1面・GI仮決定/7月28日付・関東電炉粗鋼/7月29日付1面・スクラップ相場、鉄連ガイドライン/7月31日付1面・三菱商事DX新会社、NEDO採択)、経済産業省 発表(7月24日・仮決定)、日本鉄鋼連盟 会長コメント(7月24日)、気象庁(令和8年熊本地震・7月28日)。本記事は執筆時点の公開情報に基づきます。詳細は各公式発表をご確認ください。
⚠️ 注意点
本記事は業界動向の情報整理を目的としたものであり、特定銘柄への投資勧誘を目的としたものではありません。記載の数値は公表時点のものです。地震関連の情報は状況が変化する可能性があるため、最新の公式発表をご確認ください。


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