2026年上期(1〜6月)の造船業界で、最も大きな主役となったのが今治造船です。年明け早々にライバルだった国内2位・JMU(ジャパンマリンユナイテッド)を子会社化し、世界4位の巨大造船グループが誕生。社長の檜垣幸人氏は日本造船工業会の会長として「造船再興」の旗振り役も担っています。
この記事では、2026年上期に今治造船で何が起きたのかを、日本海事新聞のコラム・会見記事や公開情報をもとに、就活・投資・業界研究のいずれにも役立つ形で整理します。憶測は交えず、確認できた事実ベースでまとめました。
※本記事は2026年6月時点の公開情報(日本海事新聞、各社発表、報道)に基づきます。数値は公表時点のものです。今治造船は非上場のため、確報の業績は公表ベースで記載しています。
📖 この記事の目次(クリックでジャンプ)
- 3行でわかる「2026年上期の今治造船」
- 最大の動き:JMUを子会社化(1月5日・議決権60%)
- 誕生したグループの規模──世界4位・国内シェア50%超
- 檜垣幸人会長の戦略──「世界シェア20%回復」と建造能力2倍
- 統合シナジーの中身──NSY・生産購買・工場のすみ分け
- 足元の実績──3000隻達成・売上4646億円・手持ち約4年分
- 向き合う課題──丸亀工場の事故と人手不足
- まとめ
3行でわかる「2026年上期の今治造船」
📌 上期の要点
- 1月5日付でJMUを子会社化(議決権ベースの出資比率を30%→60%に引き上げ)。世界4位・国内シェア50%超の巨大グループが誕生
- 檜垣幸人社長は日本造船工業会の会長として、「建造量世界シェア20%回復」「2035年に国内建造能力2倍」を掲げ、業界再興をけん引
- 2025年に新造船累計3,000隻を達成。一方で3月には丸亀工場で死亡事故が発生し、安全と増産の両立という重い課題にも直面
最大の動き:JMUを子会社化(1月5日・議決権60%)
2026年上期最大のニュースは、今治造船によるJMUの子会社化です。今治造船は2026年1月5日付でJMU株の追加取得を完了し、議決権ベースの出資比率を30%から60%へ引き上げました。翌6日には、今治造船の檜垣幸人社長とJMUの廣瀬崇社長が東京都内で共同会見を開きました(日本海事新聞 2026年1月7日付)。
もともとJMUは、JFEホールディングス(HD)とIHIが各35%、今治造船が30%を出資する会社でした。2024年6月にJFEHDとIHIが保有株の一部を今治造船へ譲渡すると発表し、2024年11月には公正取引委員会が独占禁止法上問題なしとするクリアランスを通知。これを経て、今治造船60%・JFEHD20%・IHI20%という新しい資本構成が完成しました。JFEHDとIHIは持分法適用会社として、引き続きJMUと関係を維持します。
⚠️ なぜJFE・IHIは残るのか
檜垣社長は会見で「JFEHDは鋼材などで、IHIは防衛分野でそれぞれ関係がある。LNG・アンモニア・水素など船舶の新燃料分野では、プラントメーカーが持つ化学の知識が必要で、造船の知識だけではやっていけない」と説明。単なる資本の問題ではなく、新燃料船時代に向けた技術連携として両社との関係を重視している点は、押さえておきたいポイントです。
誕生したグループの規模──世界4位・国内シェア50%超
今治造船とJMUの統合で誕生したグループは、年間建造能力が約470万総トン。国内の建造シェアは過半を占め、世界でも第4位クラスの規模になりました。国内首位(今治造船)と2位(JMU)の連合は、中国・韓国勢に対抗するうえで大きな意味を持ちます。
背景にあるのは、日本の建造量世界シェアが約13%まで落ち込んだという危機感です。檜垣社長は2025年7月の会見で、「個々の企業として利益を追いかけるだけでなく、日本の造船業を残すため増産し世界シェアを拡大する。両社で攻めに入りたい」と語っています(日本海事新聞 2025年7月24日付)。業界全体の構造変化は造船業界の将来性 2026年最新版でも解説しています。
檜垣幸人会長の戦略──「世界シェア20%回復」と建造能力2倍
今治造船を語るうえで欠かせないのが、社長の檜垣幸人氏です。同氏は2025年6月に日本造船工業会の会長に就任し、就任後初の会見で「日本の造船業の建造量世界シェア20%回復」という目標を打ち出しました。これが造船再興の機運を一気に加速させ、最終的に2035年に国内建造能力を今の2倍(外航貨物船対象で1,800万総トン)に引き上げるという国家目標へとつながっていきます。
2026年の年頭所感で檜垣社長は、「人手不足が続く中でチャレンジングな目標ではあるが、オールジャパンのアライアンスを通じて新燃料船などの先駆的な図面を生み出し、業界を挙げて今後10年間、フルスロットルで取り組みたい」と決意を述べています(日本海事新聞 2026年1月6日付)。この国家目標の実現に向け、官民で1兆円規模の投資が計画され、うち3,500億円は政府による10年間の基金として動き始めています。
統合シナジーの中身──NSY・生産購買・工場のすみ分け
今治造船とJMUは、子会社化の前から営業・設計の合弁会社「日本シップヤード(NSY)」を立ち上げており、ここでは既に成果が出ています。今後は生産・購買の面でもシナジーを出す方針で、両社首脳は会見で次のような具体策に言及しました(日本海事新聞 2026年1月7日付)。
- 支援工場の相互活用──今治造船の西条工場東ひうち事業部(愛媛県西条市)で製造する船舶居住区を、JMUでも利用する可能性
- 建造船種のすみ分け──今治造船は10工場、JMUは3工場を保有。重なる船種があるため、すみ分けが検討項目に
- 工場削減はしない──「2035年に建造能力を2倍にする目標に向かっており、工場を減らすことは考えていない」(檜垣社長)
一方、政府の「造船業再生ロードマップ」が業界を1〜3グループ化する方針を示したことには、檜垣社長は「これ以上グループ化する必要があるのか分からない」と慎重姿勢。むしろ「存続している造船会社は船づくりで生き残っており強いが、設計能力面で限界に来ている。われわれは率先して設計分野でのアライアンスをつくりたい」と、設計連携を重視する考えを示しました。今治造船・JMUを含む業界再編の全体像は造船業界 再編マップ完全ガイドをどうぞ。
足元の実績──3000隻達成・売上4646億円・手持ち約4年分
戦略だけでなく、足元の数字も好調です。2025年には新造船の累計建造が3,000隻に到達。同年は合計65隻・約336万総トンを引き渡し、LNG2元燃料の自動車運搬船やケープサイズバルカー、1万3,900個積み・5,800個積みのコンテナ船、各サイズのばら積み船、プロダクトタンカー、RORO船など、幅広い船種を手がけました。
| 項目 | 実績 |
|---|---|
| 2024年度 売上高 | 4,646億円(前年度比+4%・増収増益) |
| 2024年度 受注(NSY経由) | 82隻・420万総トン |
| 2024年度 竣工 | 68隻・308万総トン(バルカー53・コンテナ11・自動車4) |
| 手持ち工事量 | 約4年分 |
| 2025年度 建造見込み | 約66隻・360万総トン |
檜垣社長は2024年度の好業績について「為替の円安効果が大きい。平均1ドル=150円超でドルの入金があった。資機材価格は高騰しているものの、円安で売り上げなどが伸びた」と説明しています。会社の沿革・強みの詳細は今治造船の会社解説(2026年最新版)や、日本の造船会社 完全比較もあわせてご覧ください。
向き合う課題──丸亀工場の事故と人手不足
上期は明るい話題ばかりではありませんでした。2026年3月28日、今治造船の丸亀事業本部丸亀工場(香川県丸亀市)で、クレーンによる船舶部材の移動中に吊り具の一つが外れ、バランスを崩した部材が作業員に衝突。協力事業者の従業員1人が亡くなる事故が発生しました(日本海事新聞 2026年3月31日付)。原因は関係当局が調査中で、今治造船は「事故の重大性を厳粛に受け止め、再発防止に向けて全社を挙げて取り組む」としています。
増産に向けてアクセルを踏む一方で、現場の安全をどう確保するか。さらに、業界共通の人手不足も大きな壁です。今治造船は2026年3月期に採用を1.5倍の120人規模へ拡大するなど人材確保を急いでおり、「増産と安全と人材」の三立が、これからの今治造船グループに問われています。
まとめ
- 2026年上期の今治造船は、1月5日のJMU子会社化(議決権60%)で世界4位・国内シェア50%超のグループを形成した
- 檜垣幸人社長は造船工業会会長として「世界シェア20%回復」「2035年建造能力2倍」を掲げ、業界再興をけん引している
- NSYに続き生産・購買のシナジーを追求。工場は削減せず、設計分野のアライアンスを重視
- 足元は3,000隻達成・売上4,646億円・手持ち約4年分と好調だが、丸亀工場の死亡事故・人手不足という重い課題にも向き合う
2026年上期の今治造船は、「日本の造船業を残す」という使命感のもと、ライバルとの連合・国家目標・新燃料船開発という大きな絵を描き始めた半年でした。グループの一翼を担うJMU側の動きはJMU 2026年上期まとめで、就職・年収の視点は今治造船×JMUの年収・福利厚生で深掘りしています。
💼 造船業界への就職・転職を考えている方へ
今治造船グループのような大手造船は、新卒・中途とも「業界研究」と「自分に合う社風の見極め」が成否を分けます。新卒・若手なら就活クチコミと選考体験談が豊富なワンキャリア、大学院生(修士・博士)・理系学生なら院生特化のスカウト・就職相談サービスアカリク、社会人の転職なら専門のキャリアアドバイザーに相談できるユメキャリ転職を併用すると、ミスマッチを避けやすくなります。
本記事の出典
- 📰 日本海事新聞 電子版(2025年7月24日/2026年1月6日・7日/2月4日/3月31日付)──今治造船・JMU子会社化会見、檜垣社長年頭所感、ニュース深読みコラム、丸亀工場事故
- 📄 政府「造船業再生ロードマップ」・総合経済対策(造船業再生基金)/公正取引委員会クリアランス/各種報道
本記事は2026年6月時点の公開情報に基づく情報整理であり、特定企業への投資・入社を推奨するものではありません。数値・計画は今後変動するため、最新情報は各社公式発表でご確認ください。
⚠️ 注意点
本記事は業界動向の情報提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。記載内容は執筆時点の公開情報に基づき、今後変更される可能性があります。


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