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鉄鋼業界に関わる人の必修ニュース 2026年8月第1週|日鉄が通期上方修正・28年ぶり協調介入で円高・暫定AD課税発動──これだけ押さえれば情報通

鉄鋼トピックス
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「業界の人と話すとき、話題に困りたくない」「先週何が動いたか、最低限これだけは押さえておきたい」──そんな鉄鋼業界に関わる方のための、週次キャッチアップ記事です。

本記事は2026年8月11日時点の公開情報(鉄鋼新聞・日刊産業新聞、経済産業省・財務省等の公式発表)をもとに、業界人なら最低限押さえておきたい先週(8月3日〜9日)のトピックスを1本に凝縮しました。決算・為替・関税と歴史的な動きが重なった、今年有数の「大ニュース週」です。

※本記事は2026年8月11日時点の公開情報に基づきます。数値は公表時点のものです。

📖 この記事の目次(クリックでジャンプ)

1. 日本製鉄が通期上方修正──日鉄・JFE・神戸製鋼の4〜6月期決算まとめ

日本製鉄は8月4日、2027年3月期の通期連結事業利益予想を前回の5,300億円から1,000億円増の6,300億円に上方修正しました(鉄鋼新聞・日刊産業新聞8月5日付1面)。牽引役は米USスチールで、米国鋼材市況の上昇などを背景にUSスチールの実力ベース事業利益は1,800億円へ上振れする見通し。一方、国内製鉄事業は3,800億円に下振れ、「海外が国内を補う」構図がはっきり出た決算です。4〜6月期の連結事業利益は1,455億円(前年同期920億円)、純利益は752億円(同1,958億円の赤字)でした。売上収益は2兆8,211億円(同2兆87億円)、鋼材平均単価はトン14万1,800円と前年(13万9,700円)を上回っており、数量ではなく単価で稼ぐ体質への移行が数字にも表れています(日刊産業新聞8月6日付の高炉3社決算表より)。

これで高炉3社の4〜6月期が出そろいました(日刊産業新聞8月6日付1面)。JFEホールディングスは事業利益323億円(前年同期162億円)と倍増し、中東情勢によるコスト影響が通期600億円に上る見通しながら、鋼材の追加値上げとインド事業の収益貢献でカバーし通期2,150億円を維持神戸製鋼所は4〜6月期経常利益226億円(前年同期比21%減)ながら通期経常1,200億円を据え置き、鉄鋼部門は価格転嫁の浸透で下期に黒字転換を見込みます(鉄鋼新聞8月6日付1面)。3社とも「下期に利益改善」を描いている点が共通項です。JFEの純利益は312億円(前年同期71億円)で、エンジニアリング事業のセグメント利益89億円は4〜6月期として過去最高。神戸製鋼所は機械系事業などが下支えし、通期の当期純利益1,000億円を見込んでいます(鉄鋼新聞8月6日付1面)。

📌 ここはチェック──日鉄の上方修正は「国内で稼いだ」のではなく「USスチールが稼いだ」結果です。実力ベース事業利益7,000億円(前期実績6,504億円)の見通しは維持されており、買収したUSスチールが早くも利益の柱に育ちつつあることが、この決算の最大のポイントです。

2. 28年ぶりの日米協調介入で円高──鉄スクラップは5万円割れ

先週の相場を一変させたのが為替です。日米両政府は7月31日に円買いの協調為替介入を実施し、8月3日に共同声明を発表しました。円買いでの協調介入は1998年6月以来、実に28年ぶり。1ドル=163円前後まで進んでいた円安は一転し、東京市場で一時155円台まで円高が進みました(日本経済新聞ほか)。

片山さつき財務相は、過度な変動と無秩序な動きに対処するための実施だと説明しています(報道各社)。鉄への影響は即座に出ました。円建ての輸出価格が下がったことで鉄スクラップの輸出前提が変化し、東京製鉄は4日から全拠点で買値を1,000円引き下げ。関東地区の電炉買値は約4カ月ぶりに5万円を割り込みました(鉄鋼新聞8月5日付1面)。週末時点の総合価格(H2・東名阪平均)は5万円ちょうど、輸出向けの湾岸価格(関東・H2)も4万7,000〜4万8,000円へ下落しています(日刊産業新聞調べ・8月7日付)。一方で、輸入原料のコスト低下や輸入鋼材の価格競争力回復という「逆方向の力」も働き始めるため、AD課税による輸入抑制効果との綱引きになります(この見通し部分は筆者の見立てです)。

3. 暫定AD課税、8月8日発動──めっき鋼板に29.2〜55.3%

先週「クロ」仮決定をお伝えした韓国・中国製の溶融亜鉛めっき鋼板(GI)に対するアンチダンピング措置は、閣議決定を経て8月8日から暫定課税が発動されました。税率は全体で29.2〜55.3%(鉄鋼新聞によると韓国製が29〜38%、中国製が50〜55%)、期間は12月7日までです(財務省・日本経済新聞8月4日付)。仮決定からわずか2週間でのスピード発動となりました。対象のGIは屋根・壁などの建材やガードレール、冷蔵庫の部品などに幅広く使われる鋼材です(日本経済新聞)。2025年4月の国内4社による課税申請→同8月の調査開始→2026年7月24日の仮決定→8月8日の暫定課税と、手続きの重いAD制度としては異例のテンポで進んでいます。

市場はすでに反応しています。薄板3品の輸入は1〜6月に前年比17%減の139万トンまで細り、GIの輸入は半減(鉄鋼新聞8月5日付)。国内では酸洗鋼板のラインがタイト化して一部で受注量調整が始まるなど(同8月4日付1面)、輸入材から国内材への回帰が具体的な需給の変化として現れてきました。詳しい制度のしくみはAD課税の深読み解説をどうぞ。

4. 日鉄・名古屋の新熱延ライン竣工──3,000億円・42年ぶりの全面刷新

日本製鉄は8月6日、名古屋製鉄所(愛知県東海市)に建設していた次世代熱延ラインの竣工式を開きました。投資額は資材費・人件費の上昇で当初想定の2,700億円から約3,000億円に膨らみ、年産能力は600万トン。日鉄が熱延ラインを全面刷新するのは42年ぶりで、17日から商業稼働を始めます(鉄鋼新聞・日刊産業新聞8月7日付1面)。

狙いは自動車用鋼板の高度化です。引張強度1.0ギガパスカル級以上の「超ハイテン」鋼板の量産に対応し、1963年から63年間稼働してきた旧ラインは年度内に新ラインへ一本化して休止します。稼働後、日鉄の熱延生産は名古屋・君津(千葉県)・八幡(北九州市)の3カ所へ集中する体制となり、今井正社長兼COOは竣工式で、名古屋製鉄所の役割は製品の量と質の両面で一段と高まるとの考えを示しました(鉄鋼新聞8月7日付1面)。国内の鉄鋼内需が縮む中でも、「量ではなく質」で勝負する国内投資は続いている──先週の輸出3,000万トン割れの文脈(深読み解説)とセットで見ると、日本の鉄鋼業の進む方向がよく分かるニュースです。

5. グリーン水素で還元鉄、国内初──JFEなどが試作成功

JFEスチール、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)、やまなしハイドロジェンカンパニー、巴商会、カナデビア、山梨県企業局、水素製鉄コンソーシアム(GREINS)は7月31日、日本初となるグリーン水素を使用した還元鉄の試作に成功したと発表しました(日刊産業新聞・鉄鋼新聞8月3日付1面)。

山梨県で製造したグリーン水素(再生可能エネルギー由来)を、JFEスチール東日本製鉄所(千葉地区)の直接還元試験設備(シャフト炉)へ運び、水素だけで鉄鉱石を還元する──という一連のサプライチェーンを実際に回して見せた点が画期的です。鉄鋼業は日本のCO2排出の約14%を占める最大の産業排出源。「グリーン水素で鉄をつくる」が実験室から実装段階へ進んだことは、GXスチールの公共調達開始(先週既報)と並ぶ脱炭素の節目と言えます。母体のGREINSは2022年にJFEスチール・神戸製鋼所・金属系材料研究開発センター(JRCM)で結成され、千葉に建設したシャフト炉で2024年度から直接水素還元技術の開発を進めてきました。JFEは2035年ごろまでのカーボンニュートラル実現に向けた複数技術の確立を中期計画に掲げており、今回の成果はその通過点になります(日刊産業新聞8月3日付1面)。

6. その他、今週の小ネタ

  • 7〜9月期の粗鋼生産は2,120万トン見通し──経産省の生産計画ヒアリング。前年同期比6.4%増で2四半期連続の増加。半製品生産が押し上げ(鉄鋼新聞8月7日付)
  • 高炉品H形鋼の供給にタイト感──大型建築物件が各地で始動し、需要が前倒しで底打ち。安定供給へ販価改善が急務と報道(同8月3日付1面)
  • 薄板3品在庫は395万トンに減少──6月末で3カ月連続の400万トン割れ(日刊産業新聞8月6日付)
  • 関東の異形棒鋼、トン1万5,000円値上げ完遂へ──合同製鉄・朝日工業系の関東デーバースチールが8月17日契約分から積み残し分の転嫁を急ぐ(鉄鋼新聞8月7日付)
  • 日本製鋼所の4〜6月期は経常8.8%増──防衛関連が堅調(日刊産業新聞8月4日付)
  • 大阪製鉄・西日本熊本工場は生産・出荷停止が継続──熊本地震の被災状況を点検中(同8月4日付)。1日も早い復旧をお祈りします

7. 今週の用語解説──ニュースを読み解くキーワード

協調介入とは

複数の国の通貨当局が示し合わせて同時に為替市場で売買を行う介入のこと。一国単独の介入より市場へのインパクトが格段に大きいとされます。円買いの日米協調介入は1998年6月(アジア通貨危機時)以来28年ぶりで、それだけ当局が円安を「行き過ぎ」と見ていた証拠と言えます。

超ハイテンとは

超高張力鋼板(ウルトラハイテンサイルスチール)の略称で、引張強度が非常に高い自動車用鋼板のこと。強度1.0ギガパスカル(1平方ミリあたり約100kg超の力に耐える)級以上を指すことが多く、薄くても強いため車体の軽量化と衝突安全性を両立できます。EV時代の電池重量を相殺する切り札として需要が拡大しています。

還元鉄(直接還元鉄)とは

鉄鉱石を溶かさずに、ガスで酸素を取り除いて(還元して)つくる鉄のこと。石炭で還元する高炉と違い、水素で還元すればCO2をほとんど出さずに鉄がつくれるため、製鉄の脱炭素の本命技術とされます。今回のJFEらの成果は、その水素を「再エネ由来のグリーン水素」でまかなった点が国内初でした。

実力ベース事業利益とは

日本製鉄が使う経営指標で、在庫評価差や一過性の損益を除いた「本当の稼ぐ力」を示す利益のこと。原料価格の変動で会計上の利益が大きくブレる鉄鋼業では、この実力値で比較する方が実態をつかめます。日鉄は今期、実力ベース7,000億円(前期比23%増)の目標を掲げています。

マザーミルとは

その会社の主力製品の生産と技術開発の中核を担い、確立した技術を他拠点へ展開していく基幹工場のこと。日本製鉄にとって名古屋製鉄所は自動車用鋼板のマザーミルで、自動車産業が集積する東海地区で最先端の熱延技術を磨き、グループ全体へ広げる役割を担います。

8. まとめ──今週の3行サマリ

  • 日鉄が通期6,300億円へ上方修正、名古屋新熱延も竣工──USスチールが利益の柱に。高炉3社は揃って「下期改善」シナリオ
  • 28年ぶりの日米協調介入で一時155円台の円高──スクラップは4カ月ぶり5万円割れ。輸出・輸入の前提が一変
  • 暫定AD課税が8月8日発動(29.2〜55.3%)──仮決定から2週間のスピード実施。グリーン水素還元鉄の国内初成功など脱炭素も前進

👀 来週以降の注目──①円高がどこで落ち着くか(155円が定着すればスクラップ・輸出・輸入すべての前提が変わる)、②暫定課税発動後のGI市況と輸入動向、③お盆明けの棒鋼・形鋼の値上げ浸透と大阪製鉄の復旧状況。

決算・為替・関税という3つの大波が同じ週に押し寄せた、記録的な1週間でした。これだけ押さえておけば、明日の打ち合わせや業界人との会話で恥をかかずに済むはずです。引き続き毎週このシリーズで「業界人の必修ニュース」をお届けしていきますので、定期チェックにご活用ください。

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本記事の出典:鉄鋼新聞(2026年8月3日付〜8月7日付1面:JFE通期維持・神戸通期維持・日鉄上方修正・名古屋新熱延・スクラップ5万円割れ・酸洗タイト・H形鋼・粗鋼生産計画ほか)、日刊産業新聞(同8月3日付〜8月7日付1面:グリーン水素還元鉄・高炉3社決算・薄板在庫ほか)、日本製鉄・JFEホールディングス・神戸製鋼所の決算発表(8月4日・5日)、財務省・経済産業省(暫定不当廉売関税・8月8日発動)、日本経済新聞(協調介入・暫定関税)。本記事は執筆時点の公開情報に基づきます。詳細は各公式発表をご確認ください。

⚠️ 注意点
本記事は業界動向の情報整理を目的としたものであり、特定銘柄への投資勧誘を目的としたものではありません。記載の数値は公表時点のものです。為替・市況は急変することがあります。地震関連の情報は状況が変化する可能性があるため、最新の公式発表をご確認ください。

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