2025年4月、ある決算発表が業界をざわつかせました。
常石グループ 連結売上 3,656億円(前期比+16%)/経常利益 458億円(同+88%)── どちらも過去最高。
そしてその1か月後、常石造船は三井E&S造船を完全子会社化。さらにその数か月後には東ティモールに第3の海外拠点を建てると正式発表しました。
やることのスケールがいちいち大きすぎる──それが、いまの常石造船です。本記事では会社概要・最新業績(2024年12月期)・直近の超重要トピック・2026年以降の展望まで、最新情報ベースで完全ガイドします♪
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📑 この記事の目次
① 会社情報
② 最新業績(過去最高益の中身)
③ 会社の特長──TESS/ガンツウ/PR力
④ 三井E&S造船の完全子会社化(2025年6月)
⑤ 東ティモール工場 2026年着工の衝撃
⑥ 新燃料船──メタノール累計27隻以上・アンモニアAiP取得
⑦ 国内最大級の修繕事業
⑧ 2026年度以降の展望
⑨ まとめ:なぜ常石は「異端」と呼ばれるのか
〜 会 社 情 報 〜
| 項目 | 内容 |
| 会社名 | 常石造船株式会社(つねいしぞうせんかぶしきかいしゃ) |
| 代表者 | 奥村 幸生(おくむら さちお)代表取締役社長 |
| URL | https://www.tsuneishi.co.jp/ |
| 本社・マザー工場 | 広島県福山市沼隈町常石1083(常石工場) |
| 国内拠点 | 因島工場(広島県尾道市/ブロック工場) |
| 海外建造拠点 | 🇨🇳 中国・舟山 / 🇵🇭 フィリピン・CEBU / 🇹🇱 東ティモール(2026年着工・2027年稼働予定) |
| 主な関連会社 | 常石鉄工・常石商事・三保造船所(静岡)・神田ドック(広島)・鹿児島ドック鉄工・三井E&S造船(2025年6月完全子会社化)・新潟造船・由良ドック(和歌山) |
こうして並べると、常石グループのカバー範囲の広さが一目で分かります。新造船・ブロック生産・修繕・舶用機器・海運・エネルギーと、海事バリューチェーンを縦にも横にも押さえているのが大きな特徴です。
〜 最 新 業 績 〜
📈 ツネイシHD連結:売上・経常益ともに過去最高
| 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | |
| 連結売上高 | 約3,000億円 | 3,150億円 | 3,656億円(+16%・最高) |
| 経常利益 | 約170億円 | 244億円 | 458億円(+88%・最高) |
| 新造船受注 | ─ | ─ | 43隻 |
📉 2025年12月期(最新)は反動減──常石グループの2025年連結業績は売上3,480億円(▲4.8%)・経常益325億円(▲29%)と、2024年の絶好調から反動減となりました。造船事業はメタノール等の新燃料船で工期が長期化し建造隻数が減ったことが響きます(出典:日経新聞 2026年4月報道/常石グループ連結業績報告)。短期の揺れはあってもGX先行投資は中長期の競争力に直結するため、2026年以降の挽回が焦点です。
経常利益が前期比 約1.9倍──このインパクトは強烈です。海運市況の改善による船価上昇、円安、そして主力のカムサマックスバルカーやコンテナ船の受注好調が重なった結果です。
常石造船単体(1月〜12月期)でも、売上高1,000億円超/営業利益・純利益ともに直近3年で右肩上がりの成長軌道に入っています。
🔍 業績好調の3つの構造要因
- ① 船価上昇局面──世界的な需給逼迫で新造船価格が継続上昇
- ② 円安効果──ドル建て契約の多い造船業にとって追い風
- ③ 海運以外の全事業セグメントが伸長──造船・舶用機器・エネルギーが揃って成長
「稼げる時に稼ぎ、稼いだ利益で次の10年に投資する」──常石が東ティモール進出や三井E&S買収に踏み切れた財務的バックボーンは、まさにこの好業績にあります 💪
〜 会 社 の 特 長 〜
① TESSシリーズ500隻超──世界バルカー市場のデファクトスタンダード
常石造船を語るうえで外せないのが、世界の海運会社が惚れ込む──
「TESSシリーズ(Tsuneishi Economical Standard Ship)」
1984年に1番船を竣工してから、現在までに500隻以上の建造実績。これは世界の中型バルカー市場で「事実上の業界標準」と呼べる水準です。さらに、より大型のカムサマックス(Kamsarmax)型では年10隻体制の目標を掲げ、東ティモールでの増産計画もこのカテゴリーが軸になります。
TESSやカムサマックスだけでなく、小型旅客船・LPG船・コンテナ船・タンカーなど、対応船種の幅広さも常石の強みです 🚢
② 旅客船「ガンツウ」──和の美学を体現した一隻
2017年竣工の旅客船「ガンツウ」はとても印象的でした。瀬戸内海をクルーズする少人数限定の高級リゾート船で、「日本を感じられる和の旅客船」に仕上がっています。実は建造中に少しだけ見させていただいたんですよ(^^♪
ガンツウでの瀬戸内旅行は、私の人生でやりたいことリストに入れてあります(笑)
③ 国内造船で「最もPRがうまい」会社
常石造船は、テレビ番組やHPを通じた企業PRが国内造船企業で1番上手いと私は感じています。NHK「国際報道2025」では東ティモール進出が取り上げられ、東洋経済オンラインでは「異端を自認する社長」として奥村社長の特集記事が組まれるなど、メディア露出は抜群です。
デニム生地の新ユニフォーム採用(2018年)や創業家・神原一族の物語など、語りたいトピックが多すぎて過去イチ収拾がつきません…´д` ;
そんな常石造船には、これからもとことん注目です!
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〜 三 井 E & S 完 全 子 会 社 化 〜
2025年6月30日──この日、日本の造船業界の地図が少し書き換わりました。常石造船が三井E&S造船の全株式を取得し、完全子会社化。これにより、三井E&Sグループは造船事業から完全撤退することになりました。100年以上続いた玉野(岡山)の造船拠点も、常石の傘下で新たな歴史を刻むことになります。
玉野は古いクレーンも多く存在していますから、少しずつでも更新していって最新工場になるとより期待できます。
ここだけの話、三井造船時代の設備投資に対するスタンスはヒドかった・・・・・
安かろう悪かろうで意味不明な設備を導入したり、とある調達担当者の態度なんて過去一で最悪な会社でしたよ笑 内緒ですがね笑
🎯 統合シナジー:新燃料船・デジタル化・舶用エンジン
- 新燃料船の共同開発──商船三井+三井E&Sと、4万m³級アンモニア-LPG運搬船を共同開発、AiP(基本設計承認)取得済み
- 水素混焼タグボート計画も始動
- 三井造船昭島研究所を取得済み──開発のボトルネックだった研究所すら自社化
- 2025年10月:国内10機関の共同で「持続的で競争力に優れる海事産業のための統合シミュレーション・プラットフォーム」事業を開始(〜2030年9月)
奥村社長が業界紙インタビューで語った言葉が象徴的です──「新燃料・デジタル化でシナジーを出す」。単なる規模の足し算ではなく、技術・研究・建造の三位一体体制を本気で構築しに来ています。
〜 東 テ ィ モ ー ル 進 出 〜
もうひとつのビッグニュースが、新たな海外拠点「東ティモール工場」です。現地法人は「ツネイシ・ティモール・シップビルディング」(略称TTS?)。そもそも東ティモールってどこ?という方も多いと思うので、整理しておきます。
| 項目 | 東ティモール基礎データ |
| 📍 場所 | オーストラリアの少し北 インドネシアの右斜め下 |
| 📐 面積 | 約14,900㎢ (東京+千葉+神奈川+埼玉の合計くらい) |
| 👥 人口 | 約134万人(愛媛県とほぼ同じ) |
| 💼 主要産業 | 農業(コーヒー等)/石油・天然ガス開発 |
| 🌐 直近の動き | 2025年10月、ASEAN加盟──ビジネス環境改善が見込まれる |
🗓️ プロジェクトのタイムライン
| 時期 | マイルストーン |
| 2024年 | 現地に設計会社を設立、約50人体制でスタート |
| 2026年 | 工場本体の建設工事を着工 |
| 2027年 | 工場本体を稼働 |
| 2028年 | 1番船の引き渡しを計画 |
| 稼働5〜10年後 | カムサマックス換算で年10隻規模の建造体制を確立 |
東洋経済オンラインの特集では、奥村社長が「異端」を自認しつつ、「国内を縮小しても東ティモールを選んだのは必然だった」と語っています。日本国内では人手不足と高コスト、中国・フィリピンは既に成熟──次の20年を勝ち抜くための答えとして、ASEAN加盟直前の若い国に賭けた、というわけです。
立ち上げまでまだ時間はかかりますが、2030年代の常石造船の主力工場の1つになる可能性は十分にあります ⚓
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〜 新 燃 料 船 戦 略 〜
🌱 メタノール燃料船:累計27隻受注
常石造船のメタノール燃料船の受注実績は累計27隻に積み上がっています。船種は次の3つに広がっています。
- カムサマックス バルカー
- 66,000 重量トン型バルカー
- 5,900 TEU型コンテナ船
主力のバルカー領域でメタノール対応を一気に進めているのは、世界的にも数少ないポジションです。脱炭素規制の強化でメタノールバルカーの需要は今後さらに高まると見られており、ここで先行者利益を握っている意義は大きいです。
🌬️ アンモニア燃料船:商船三井・三井E&Sと共同で本格化
2025年、常石造船は商船三井・三井E&S造船と共同でアンモニア燃料船のAiP(基本設計承認)を取得し、本格的な受注活動に入りました。2026年ごろの完成を目標に、4万m³級アンモニア-LPG運搬船を含めた複数船型で受注獲得を狙います。
2026年からアンモニア燃料船の実証運航がスタート、2028年までのできるだけ早期に商業運航実現が業界全体の目標です。常石はこのレースの第一集団に間違いなく入っています 🥇
🌊 硬翼帆(ウィングセイル)にも参入
もう一つ印象的なのは、硬翼帆事業への参入です。バルカー+硬翼帆と聞くと「あれ、これは大島造船所と被るのでは?」と思った方も多いはず。完全に争う姿勢と見るべきか、市場全体の拡大局面と捉えるべきか──いずれにしても、常石が三井造船の技術や昭島研究所の知見を駆使して、ゼロエミッション船開発を超加速させているのは間違いありません。
〜 修 繕 事 業 〜
密かに注目しているのが、修繕事業への注力具合です。常石工場の修繕部門に加え、神田ドックや三井傘下の由良ドックも加わり、修繕部門における規模は日本一といっても過言ではありません。
売上規模は新造船の10分の1とも言われる修繕業ですが、利益率が高く、新造船市況が落ち込んでも安定的な業績を生むストック型ビジネスです。
新造船のみならず、改造工事や定期点検における技術(品質)力は世界から高く評価されています。新燃料船が増える今後は、燃料転換工事や排ガス規制(EEXI/CIIなど)対応工事の需要も急拡大が見込まれ、修繕事業はむしろこれから化ける分野です 🛠️
〜 2 0 2 6 年 度 以 降 の 展 望 〜
- 🏭 2026年:東ティモール工場 着工 / アンモニア燃料船の実証運航開始
- 🚢 2027年:東ティモール工場 稼働開始 / 三井E&S統合シナジーが本格化
- 📦 2028年:東ティモール 1番船引き渡し / アンモニア燃料船 商業運航へ
- 🌍 2030年:海事DXシミュレーション・プラットフォーム事業 完了 / 国内造船グループ体制が成熟期に
今治造船×JMU統合が「世界4位の巨人」を生み出した一方で、常石造船は「グローバル分散×新燃料先行×研究所内製化」という独自路線で勝負しています。日本造船業全体の動きについては、こちらの総括記事もどうぞ → 【2025年度 完全総括】日本造船業に起きた静かな革命
〜 ま と め 〜
常石造船を一言で表すなら、「異端の戦略で次の20年を取りに来ている造船所」です。
- 📈 ツネイシHD連結で売上3,656億円・経常益458億円の過去最高(2024年12月期)
- 🏭 三井E&S造船を完全子会社化(2025年6月)──玉野工場まで取り込む
- 🌏 東ティモール工場を2026年着工──カムサマックス年10隻体制を狙う
- 🌱 メタノール燃料船累計27隻受注 / アンモニア燃料船AiP取得
- 🛠️ 神田ドック・由良ドックを束ねた国内最大級の修繕事業
- 📺 国内造船で最もPRがうまく、ブランド構築力がずば抜けている
これだけのビッグディシジョンを同時並行で進められる造船会社は、国内では他にほぼありません。今治造船×JMUが「規模で勝負」なら、常石は「独自路線で勝負」──2025〜2030年の日本造船業の復活ストーリーで、常石造船は間違いなく主役の一角です。
これからも常石造船には注目していきます!
ごあんぜんに ⚓
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