【複雑な家系?!大手重工企業が合体して誕生した造船企業】ジャパン マリンユナイテッド株式会社にスポットを当ててみた

会社紹介

ジャパン マリンユナイテッド株式会社は略してJMUと呼ばれています。
ごくまれに”ジャパンマリン”と略している人を見かけます。
マクドナルドを”マック”と呼ぶか”マクド”と呼ぶか的な違いですかね(笑)
また「ジャパン マリンユナイテッド」と表記する際に、正式には”ジャパン”と”マリンユナイテッド”の間に半角スペースがあると指摘されたことがあります。
HPを見ると確かに空いてる(;゚Д゚) ・・・・・トリビアの泉でございました。
そんなJMUを分解してみると「住友重機械工業」「IHI」「日立造船」「JFE-HD」に分かれ、各社の船舶部門や艦艇部門が手を取り合うことで誕生したという歴史があります。

詳しくはJMUのHPにある企業情報のHistoryを参照ください。とても分かりやすいです。
今回はそんな複雑な家系に生まれたJMUについてまとめてみました。

・会  社  名:ジャパン マリンユナイテッド株式会社
・ふりがな:じゃぱん まりんゆないてっど
・代  表  者:灘 信之(なだ のぶゆき) 代表取締役社長
・U R L:ジャパン マリンユナイテッド株式会社 (jmuc.co.jp)
・本  社:神奈川県横浜市西区みなとみらい4-4-2 横浜ブルーアベニュー
・他  拠  点:熊本県玉名郡長洲町大字有明1(有明事業所)
      広島県呉市昭和町2-1(呉事業所)
      三重県津市雲出鋼管町1-3(津事業所)
      京都府舞鶴市余部下1180(舞鶴事業所)
      神奈川県横浜市磯子区新杉田町12(横浜事業所 磯子工場)
      神奈川県横浜市鶴見区末広町2-1(横浜事業所 鶴見工場)
      広島県尾道市因島土生町2477-16(因島事業所)
・関係会社:日本シップヤード下部
      株式会社JMUアムテック(兵庫)
      株式会社IMC(東京)
      JMUディフェンスシステムズ株式会社(京都)
      株式会社有明エンジニアリング(熊本)
      株式会社JMUシステムズ(熊本)
      JMUビジネス・サポート株式会社(熊本)
      株式会社アイ・イー・エム(広島)
      株式会社津マリン製作所(三重)
      株式会社京浜マリン製作所
      株式会社アイイーシー(広島)
・海外拠点:イギリス、オランダ、トルコ、シンガポール、中国、ベトナム

2012年にIHI系のマリンユナイテッド(MU)と日立系のユニバーサル造船が経営統合して
ジャパン マリンユナイテッド(JMU)が誕生しました。

全国7拠点を構え、国内トップレベルの建造能力やエンジニアリング力、研究設備や開発力を備えています。さすが重工メーカの血筋なだけあって、スケールメリットを最大限活用した開発力で他社との差別化を図り、高付加価値船の建造で世界の海運を支えています。

各拠点(事業所)によって得手不得手はありますが、会社としては特定の船種に特化せずに船のデパートかのごとく様々な船を建造する体制を整えています。
特定の船種に特化するということは船種ごとの市況に業績が大きく左右される反面、連続建造などによるコストダウンによってコスト競争力を得ることができますが、JMUは幅広い船種に対応することで市況変動に伴うリスクを最小限にするといった経営方針のようです。

また、JMUは一般商船のみならず艦船事業を有しています。艦船事業では官公庁向けの巡視船など特殊船を建造し、設計からアフターサービスまでを一貫して対応できる強みを持っています。
今後の日本は国防に注力するとのことから防衛予算額を増やす方針を打ち出しています。これに伴い船の修繕業に従事する企業に対して補助金等で設備更新を促す流れもあると予想しています。実際にそんな話があるとかないとか・・・・中の人から少し聞いたことがありました。JMUでは舞鶴事業所と因島事業所が修繕工場だったかな・・・?
造船業界では修繕工場の設備投資は後回しにされる傾向にありますので、ようやく修繕工場にもスポットライトが当たるのか?!という感じで期待しています。

その他事業としては海洋エンジニアリング事業があり、石油掘削リグやFPSO(浮体式石油生産貯蔵船)を手掛けており、最近では洋上風力発電関連にも注力していく方針のようです。洋上風力のような再生エネルギー関連の技術開発においては、石油やガス分野の経験や知見が必要になるため、ここでも重工系メーカであるJMUの強みが活かされます。

洋上風力事業そのものが一過性のものであり、限られたリソースを割いて注力すべきではないというコメントも多く見受けられますが、国としても多くの資金の流入さている分野ですので、企業として対応可能なのであればやらない手はないのでしょう。
三菱重工/香焼工場売却や住友重機械の商船撤退など、大手重工系造船所からは暗いニュースが多い昨今。JMUには引き続き頑張ってもらいたいと思います。

しかしながら気になる点が1つ。
それは、2021年に今治造船と共同出資にて日本シップヤード㈱(NSY)を立ち上げたことで、今治造船との関わりが深くなったことです。今治造船とJMUの取り扱う商船(LNG船以外)の設計や営業を行う会社のようですが、出資比率は今治造船51%でJMU49%です。
発足当時の社長はJMU出身者でしたが、今は今治造船出身者になっています。
このような関係性もあり、気付けばJMUの株主構成にも今治造船の名が・・・・
(JFEHD35%、IHI35%、今治造船30%)

着実に今治造船が勢力を拡大させている様子が分かります。
国が公金を使って造船業を支えている中韓に対抗するには、日本国内の造船所同士が手を取り合う必要があると言われてきました。ついに大手重工系造船所もオーナー系企業と手を取り合う時代になったのかと・・・重工メーカとしてのプライドとか言ってられなくなったのだろうと、時代の変化を感じる今日この頃です。

そう遠くない未来、外航船を取り扱う日本の大手造船所は今治造船とその他数社くらいまで統廃合が進むのでしょうか・・・・そうでなければ中韓に勝てなくなってきていますので。
日本が世界の新造船における建造量No.1だった時代が懐かしいです・・・(;´・ω・)

〜 直 近 の 動 向 〜

界に挑戦するための選択 日本シップヤード(NSY)の設立

2021年1月、国内造船企業の1位である今治造船と2位のJMU日本シップヤード(NSY)という合弁会社を設立しました。これはすごく衝撃的なニュースだったと記憶しています。

今後、中韓の造船企業と戦っていくにあたり、オーナー系企業同士の技術提携や協業は十分にありうる話だと考えていましたが、まさかオーナー系企業と大手重工系造船企業が手を組むとは・・・・
驚いたものの、NSYが目指すのは世界の造船企業に勝つことであり、今まで以上に積極果敢に挑戦するという姿勢を見ていると、今後のNSYには期待せずにはいられません。

発足から3年強が経過し、これまでの累積受注は400隻以上になるとのこと。
とはいえ、日本の建造シェアを何倍にも上げる建造能力(リソース)は日本に残っておらず、今後は選択と集中で量より質を重視することに勝機を見出すとのこと。
市況が落ち込んで暇になったら解散し、忙しくなったら復活するという中国のゾンビ造船所を相手にするには量より質という方向性に間違いはないと思われます。

全ての船主の全てのニーズに応えるのではなく、長年の取引があるロイヤルカスタマーに焦点を当て、そのニーズを満たすことに集中する戦略は、今の日本造船企業にとって唯一の道と言っても過言ではないように思えます。

今後もNSYの営業&設計力と、それを具現化する今治造船&JMUには期待したいです(^O^)

シップ・オブ・ザ・イヤー2023の受賞

JMUとしては7年ぶりの受賞となった本件。JMUと今治造船が連携して建造した世界最大級のコンテナ船が選ばれました。積載可能なコンテナの数はなんと24,000個・・・・
つい先日まで14,400個積みとかじゃなかったでしたっけ?
JMUが建造した24,000TEU型コンテナ船は”ONE INNOVATION”と命名されました。
驚くべきはそのサイズ!全長は約400mで幅が約60m。

JMU呉といえば戦艦大和なわけですが。。。。。え?!知りませんでしたか?
知らなかった人は呉市の大和ミュージアムにレッツゴー♪

話が逸れましたが、24,000TEU型コンテナ船は戦艦大和の1.5倍のサイズ!
実は、偶然呉に行った際にJMUの岸壁にこのコンテナ船が係留されていまして、
呉港側から眺めていたのですが正直圧巻のサイズ・・・・

こんな鉄の塊が海に浮かぶとか・・・浮力ってスゲーって感じで素人丸出しでした(笑)

今後もJMUのスケールメリットを活かした設計力や開発力で素晴らしい船を造り続けてくれることに期待しています。

JMUX(ジェイマックス)指導!

新燃料船への転換期ということもあり、新造船需要は依然として高いです。しかしながら、資機材の高騰や人材不足、安定しない為替動向などの逆風が決して弱くないのも事実。各造船企業は決して楽観的にはなっていない中、JMUは新プロジェクト?を立ち上げたようです。

それがJMUX(ジェイマックス)!
Xはトランスフォーメーション(変容)を意味し「ビジネス」「人」「デジタル」の3分野に対し具体的な取り組みを開始するとのこと。

具体的な取り組みで挙げられたのは「設備投資」でした。

2元燃料船の建造に伴い、ドック作業や艤装作業期間が従来よりも長引くため、設備の拡充で補うことを目論んでいる様子。事業所別では、津事業所ではゴライアスクレーン(大きな門型クレーン)の大型化更新を。有明事業所では艤装岸壁の拡充を。呉の新宮で燃料タンクを製造するための設備計画や、呉事業所の老朽化が進む設備の大型化更新を・・・
その他では工場内の作業モニタリングシステムの導入や社員のデジタル教育などなど。

具体的な期間や金額の開示はされていないが数百億規模の投資になることは間違いないと思われ、2030年を見据えた取組規模としては国内最大級ではないでしょうか?
進化し続けるJMUからは目が離せません。

〜 業 績 〜

2022年3月期2023年3月期2024年3月期
売  上  高213,300245,900269,000
営 業 利 益△1,500△15,9004,800
当期純利益300△16,1003,300
                                                           (単位:百万)

                        (単位:百万)

この円安で22-23年度営業赤字?!と少し驚きましたが、どうも為替予約を行っていた結果のようです。24年3月期は船価の改善や円安の継続、コスト削減活動の結果が出たことで黒字に浮上。新造船需要が高いこともあり、受注額は前年度比90%UPとのこと。

引き続き不安定な為替相場や資機材価格に左右されないような強い基盤を構築し、更なる収益改善を目指すとされています。
近年、大手重工系造船企業は苦戦が強いられていましたので、ぜひともJMUには頑張ってもらいたいところです。

引き続きJMUには注目です!

                                 以上

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