【目指せ世界シェア2割】ゼロエミッション船等の建造促進事業がはじまるよ〜

トピックス

ゼロエミッション船等の建造促進事業は、地球温暖化対策の一環として海運業界でのCO2排出量削減を目指す重要な取り組みとして始まりました。昨年から公募等が始まり、多くの企業が申請した模様。
体感としては半年遅れくらいの進捗状況ですが、ようやく採択結果が公表されました。

これからはじまる日本の造船会社の壮絶パワーアップ(設備増強)は必見の価値があります。
設備を増強をしただけではパワーアップしないのが製造業の難しいところ。
それぞれの設備を最適に活かし、サプライチェーンや外注先、はたまた同業他社とも手を取り合うことで日本の造船業の未来が切り開けることでしょう。
そんな未来に近づく鍵となる本補助金事業について、まずは概要だけでも知っておきましょう♪

地球温暖化対策が喫緊の課題となる中、国際海事機関(IMO)は2050年までに海運業界の温室効果ガス(GHG)排出をゼロにするという目標を掲げました。ゼロエミッション船は、水素、アンモニア、電力(バッテリー)などの環境負荷が低いエネルギーを活用し、従来の化石燃料に依存しない新しい船舶の形態を指します。日本においても、カーボンニュートラル社会の実現に向けた重要な手段として注目されています。

建造促進事業の概要

ゼロエミッション船とは、運航中にCO2をほとんど、あるいは全く排出しない船舶を指します。
本事業では、このような環境に配慮した船舶の建造を促進するために、以下のような取り組みが行われています。

  1. 技術開発の支援
  2. 建造費用の一部補助
  3. 関連する法律や規制の整備

取組み目的と目標

本事業の主な目的と目標は以下のとおりです。

・CO2排出量の削減

2021年10月
国際海事機関(IMO)は2050年頃までにGHG排出ゼロを目標として掲げました。
達成に向けた削減目安は下記のとおりです。
・2030年までに、GHG排出を20〜30%削減(2008年比)
・2040年までに、GHG排出を70〜80%削減(2008年比)

この事業では、日本国内のゼロエミッション船の普及を進め、海運業界のCO2削減に大きく貢献すると期待されています。
水素、アンモニア、電力(バッテリー)を動力源とする船舶を建造しやすい環境を整え、化石燃料に依存しない新しい船づくりを支援します。

・技術革新の促進

環境にやさしいエンジンや燃料供給システムの生産設備を整備し、最新技術を活用したゼロエミッション船の国内生産体制を構築します。例えば、水素燃料エンジンやアンモニア燃料エンジンの製造設備を整備することで、将来的には年間数十隻以上のゼロエミッション船を生産可能にすることを目指します。

・産業競争力の強化

世界では2030年までにゼロエミッション船の需要が大幅に増えると予測されています。
この需要に応えるため、日本は国内造船技術の強化を進めます。
この事業によって得られる技術や生産能力を活用し、日本がゼロエミッション船市場で世界のリーダーとなることを目指します。

・持続可能な社会の実現

2050年までにカーボンニュートラルを達成するため、ゼロエミッション船の建造や利用を通じて、環境保護と経済発展の両立を図ります。これにより、日本の海運業全体のCO2削減割合を大幅に高めるとともに、次世代にわたる持続可能な社会を構築します。

船舶の燃料転換期を日本の船舶産業が跳躍するチャンスと捉え「2030年における次世代船舶建造量のトップシェアを獲得」することを本事業の取組目標としています。

2025年1月9日(木)に採択結果が公表されました。
公表結果は下記のとおりです。
※造船企業は太文字赤ライン

今治造船や大島造船所、JMUには60億強の補助金が交付されるようです。
昨今の造船不況もあり、思うように設備投資が進まなかった企業もあったはずです。
これを機に一気に設備投資をして企業としての競争力UPが期待されます。

本補助金事業の最終年度は28年(29/03)なので、各造船所において29年からは全く違った景色(設備)になると思うと今からワクワクします。
環境省や国交省にはぜひとも来年度以降も類似補助金事業を立ち上げ、日本の海運・造船産業が盛り上がるようにしてほしいところです。

  1. 泉鋼業株式会社(中小企業)
    • 事業実施場所:香川県高松市
    • 内容:アンモニア燃料タンク生産能力増強(防熱施工建屋の新設、燃料タンク生産工場の新設)
    • 補助金交付内示額:2,047,060千円
  2. 今治造船株式会社(大企業)
    • 事業実施場所:香川県仲多度郡多度津町
    • 内容:艤装プラットフォーム新設(クレーン新設)、アンモニア・LNG・メタノール燃料タンク生産能力増強(移動建屋新設、燃料タンク用プレス新設)
    • 補助金交付内示額:6,173,395千円
  3. 株式会社大島造船所(大企業)
    • 事業実施場所:長崎県西海市、長崎県長崎市
    • 内容:艤装桟橋整備(クレーン増設・能力増強)、アンモニア・LNG燃料タンク生産能力増強(プレス機・NCプラズマ切断機増設、板曲げ設備・先行艤装工場新設)
    • 補助金交付内示額:6,485,838千円
  4. 尾道造船株式会社(中小企業)
    • 事業実施場所:広島県尾道市、広島県福山市
    • 内容:艤装桟橋整備(係船装置整備、クレーン新設)、パイプ塗装工場新設、パイプ製作工場新設
    • 補助金交付内示額:1,650,278千円
  5. 旭洋造船株式会社(中小企業)
    • 事業実施場所:山口県下関市
    • 内容:艤装桟橋整備(ジブクレーン能力増強)
    • 補助金交付内示額:3,621,301千円
  6. 株式会社ジャパンエンジンコーポレーション(大企業)
    • 事業実施場所:兵庫県明石市
    • 内容:アンモニア燃料エンジン生産能力増強(生産工場新設、屋内クレーン新設)、アンモニア燃料供給設備増強
    • 補助金交付内示額:6,635,510千円
  7. ジャパンマリンユナイテッド株式会社(大企業)
    • 事業実施場所:熊本県玉名郡長洲町、広島県呉市、三重県津市
    • 内容:艤装プラットフォーム新設(ジブクレーン新設)、機器試運転用アンモニア燃料供給設備新設、メタノール燃料タンク塗装設備新設、艤装ドック整備(ゴライアスクレーン能力増強)、アンモニア・LNG燃料タンク生産設備新設
    • 補助金交付内示額:6,651,383千円
  8. 株式会社新来島サノヤス造船(大企業)
    • 事業実施場所:岡山県倉敷市、大阪府大阪市
    • 内容:艤装ドック整備(クレーン能力増強)、アンモニア・LNG燃料タンク生産能力増強(ジブクレーン更新・増強、移動屋根増設、タンク回転台増設)
    • 補助金交付内示額:3,369,013千円
  9. 株式会社ダイゾー(中小企業)
    • 事業実施場所:大阪府大阪市
    • 内容:クレーン能力増強(ジブクレーン新設)
    • 補助金交付内示額:675,000千円
  10. ダイハツディーゼル株式会社(大企業)
    • 事業実施場所:兵庫県姫路市
    • 内容:アンモニア燃料エンジン生産能力増強(燃料供給設備増強、排ガス処理設備新設、試運転用設備新設)
    • 補助金交付内示額:981,929千円
  11. 内海造船株式会社(大企業)
    • 事業実施場所:広島県尾道市
    • 内容:艤装プラットフォーム整備(クレーン能力増強等)
    • 補助金交付内示額:900,223千円
  12. 日本ノッズル精機株式会社(大企業)
    • 事業実施場所:埼玉県久喜市
    • 内容:アンモニア・水素燃料エンジン用燃料噴射弁・ポンプ製造設備の整備
    • 補助金交付内示額:572,765千円
  13. BEMAC株式会社(大企業)
    • 事業実施場所:愛媛県今治市
    • 内容:直流配電盤の検査設備新設、高圧交流配電盤の生産能力増強、ノイズ検査装置の新設
    • 補助金交付内示額:322,326千円
  14. ボルカノ株式会社(中小企業)
    • 事業実施場所:兵庫県三田市
    • 内容:アンモニア・水素燃料ガス燃焼ユニットの出荷試験設備増強、アンモニア・水素・メタノール燃料ボイラ向けバーナ出荷試験設備増強
    • 補助金交付内示額:176,051千円
  15. 三菱造船株式会社(大企業)
    • 事業実施場所:山口県下関市
    • 内容:艤装桟橋拡張・整備(ジブクレーン能力増強)
    • 補助金交付内示額:2,156,651千円
  16. ヤンマーパワーテクノロジー株式会社(大企業)
    • 事業実施場所:兵庫県尼崎市
    • 内容:水素燃料エンジン(・燃料電池システム)生産設備新設、水素燃料供給設備新設
    • 補助金交付内示額:1,443,347千円

私が知る限り、造船会社の中では唯一JMUだけがある程度具体的な設備補強方針を出していたかと思います。
今後、多くの企業で具体的な方針が示されると思いますので要チェック!です(゜-゜)

コメント

タイトルとURLをコピーしました